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油脂工業 ゆしこうぎょうoil and fat industry

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

油脂工業
ゆしこうぎょう
oil and fat industry

油脂を精製したり,加工したりする工業。動植物の油脂を圧搾,抽出して食用油脂を製造する精製油脂工業と,油脂を加工して石鹸硬化油脂肪酸グリセリンをつくり,石油化学製品から合成洗剤を製造する油脂加工工業とがある。精製油脂工業にはダイズ,ナタネなどから食用油をつくるもの,硬化油を主体にやし油,カポック油などを加えてマーガリンをつくるものがある。油脂加工工業では,油脂に水素を添加して硬化油をつくり,分解や鹸化を行なって,酢酸,パルミチン酸,オレイン酸,ステアリン酸などの脂肪酸,薬用や爆薬原料などのグリセリン,化粧用,工業用の各種石鹸のほか,ろうそくなどを製造する。 1990年の油脂の需要量は 290万 5000tで,食用が 213万 4000t,非食用が 64万 8000t,その他 12万 3000tとなっている。食用が全体の7割を占め,そのうち9割は植物油が占めている。

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百科事典マイペディアの解説

油脂工業【ゆしこうぎょう】

動植物性原料から油脂を採取し,加工・製造するもの。食用油工業と工業油工業に大別される。油脂から硬化油,脂肪酸,グリセリン,高級アルコールなどの中間製品を経て,セッケン,マーガリン,可塑剤,界面活性剤などを製造するほか,中間製品は食品工業などに原料として供給する。
→関連項目化学工業有機化学工業

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世界大百科事典 第2版の解説

ゆしこうぎょう【油脂工業】

動植物原料から油脂を採取し,その油脂を加工して各種の二次製品を生産する工業。大きく食用油工業と工業油工業に分けることができる。1983年の数字をみると,生産量は,食用が193万t,工業用が39万t,輸出用が26万tで,合計258万tとなっている。国内向け油脂を原料の面からみると,植物油脂183万t,動物油脂49万tである。また製品輸入が47万t,輸入原料によるものが143万tで,油脂の海外依存度は74%近くに達している。

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大辞林 第三版の解説

ゆしこうぎょう【油脂工業】

油脂や蠟ろうなどを採取・精製し、それらを原料として加工、各種製品にする化学工業の分野。食用油・工業油・薬用油の製造、石鹼せつけん・硬化油・マーガリン・界面活性剤の製造などが含まれる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

油脂工業
ゆしこうぎょう

油脂を採取し加工・製造する化学工業。油脂工業は、大きく分けて動植物油脂から油脂を取り出す動植物油脂製造業(製油工業)と油脂を加工する油脂加工業の二つがある。また、用途によって食用油工業と工業油工業に分けることもできる。
 一般に油脂とは脂肪酸とグリセリンのエステル(トリグリセリド)であり、常温で固体として存在する畜産動物の脂には飽和脂肪酸が多く含まれ、常温で液体の油として存在する植物油や魚油には不飽和脂肪酸が多く含まれている。
 動物性原料からの採集方法(レンダリング)としては、一般的には加熱して油脂を溶出させる融出法が用いられる。動物油脂には牛やブタなどから得られる畜産動物油脂と、魚類から採取する水産油脂とがある。畜産動物油脂の4割程度がサラダ油、マーガリンなどの食用に使われ、残りはせっけんや化粧品などに加工されている。水産油脂は魚の煮汁から油を分離した魚油であり、多くはマーガリンやショートニング(食用硬化油)などの原料になるが、養殖魚用の飼料にも使われている。油脂の国内生産量は1960年(昭和35)の58万1000トンから1988年の242万6000トンまで増加していたが、その後は200万~220万トンほどで推移している(2008年は208万8000トン)。動物油脂の国内生産量は、1988年の76万9000トンをピークに現在はほぼ半減している(2008年は32万4000トン)。
 植物原料からの採取では、原料を加圧して油を絞り出す圧搾法と、アルコールなどの揮発性溶剤で油脂を溶出させる抽出法が用いられる。採集方法は原料の種類、油の含有量、精製方法などを考えて選択されている。油分の多い菜種、ごま、綿実(めんじつ)などは最初に圧搾法で油を絞り、ついで溶剤で抽出している(これを圧抽法ともいう)。油分が少ない大豆からとれる大豆油や米糠(こめぬか)からとれる米油(米糠油)は抽出法が用いられる。精製した油はサラダ油などの食用油やマーガリンなどの製造に使われる。あまに油、ひまし油などは塗料、印刷インキ、潤滑油といった工業用の用途がある。また、副産物の油かす(ケーキミール)は家畜の飼料などに用いられる。植物性油脂製造は家内工業的なものが多かったが、1961年に大豆の輸入自由化に伴い連続抽出装置を備えた大規模な工場にかわっていった。1971年から植物性精製油の輸入も自由化され、さらに合理化と再編が進んでいった。
 2010年(平成22)時点で、原料別油脂生産量では国産原料から搾油した油脂は38万6000トン、輸入原料による油脂は254万9000トンであり、原料油脂の種類では菜種油、大豆油、パーム油、豚脂(ラード)の順で供給量が多い。用途別の油脂消費量をみると、食用が238万6000トン、工業用が55万9000トンである。
 油脂加工業とは、油脂を原料に二次加工して脂肪酸、グリセリン、せっけん、硬化油などを製造する工業であり、石油化学原料からの合成洗剤などの界面活性剤を製造するものを含めて、油脂加工・せっけん・洗剤工業ともいわれる。油脂加工製品でもっとも多く使われているのはマーガリン、ショートニング、マヨネーズ、ドレッシングなどの食品分野である。マーガリン、ショートニングなどの原料となる部分硬化油は不飽和脂肪酸を含む植物油や魚油に水素を付加して製造するが、その過程でトランス脂肪酸が一部生成する。2003年世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)によって、トランス脂肪酸は摂取するとLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増加させ心臓疾患のリスクを高めると報告され、トランス脂肪酸を含む製品の使用を規制する国が増えている。
 油脂を加水分解して得られる脂肪酸の誘導体である各種界面活性剤は、家庭では衣料用洗剤、食器用洗剤やシャンプーなどに利用されている。ステアリン酸などの脂肪酸はタイヤなどのゴム製品の滑剤として添加されるなど工業用にも広く使用される。脂肪の分解廃液を精製して得られるグリセリンは保湿剤、乳化剤などとして化粧品に使用されたり、エチレングリコールと同様に不凍液として使用されたりする。またニトログリセリンの原料としても重要である。
 代表的な油脂加工品であるせっけんは16世紀ころ(慶長(けいちょう)年間)にポルトガルから日本に渡来したといわれているが、せっけん製造技術が発展したのは明治になってからである。1872年(明治5)に京都府知事の命で京都舎密(せいみ)局によって国内初の工業的せっけん製造が開始された。民間においては、1873年に堤石鹸(つつみせっけん)製造所が初めて国産の洗濯せっけんを製造・販売している。1890年には国内初のブランドのついたせっけんである「花王石鹸」が発売され、明治後半になってようやく一般の人も洗顔や入浴、洗濯などにせっけんを使用するようになった。需要が拡大したのに対応して、けん化釜の加熱方法、製造法(枠練りから機械練り)、新しいせっけん原料開発等の量産のための改良も進められた。
 せっけんは油脂をアルカリで加水分解処理(けん化)して得られる脂肪酸塩であるためアルカリ性であり、そのためアルカリ性に弱い羊毛や絹などの動物性繊維に使用できない、酸性の水やマグネシウムやカルシウムを多く含む硬水では洗浄効果が十分に発揮できないなどの欠点がある。石油化学工業から得られた合成洗剤は、これらの欠点を克服して高い洗浄力をもち、1960年代の電気洗濯機の普及とともに需要を拡大していった。初期の合成洗剤に使われていたアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ABS)は環境中で分解しにくく問題があったため、1970年(昭和45)までに生分解性のよい直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)に転換していった。1980年代からはさらに毒性の少ないポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)などの非イオン性界面活性剤も使用されるようになっている。また、ブドウ糖などの糖類を原料とした生分解性が高く皮膚刺激の少ないアルキルポリグリコシドや、地球温暖化への対応から植物系洗剤原料使用によって二酸化炭素(CO2)を大幅削減するα(アルファ)-スルホ脂肪酸エステルナトリウム(MES)などの界面活性剤も開発され実用化している。[山本恭裕]
『吉田時行・進藤信一・大垣忠義・山中樹好編『新版 界面活性剤ハンドブック』(1987・工学図書) ▽阿部芳郎監修『油脂・油糧ハンドブック』(1988・幸書房) ▽日本油化学会編『油化学便覧――脂質・界面活性剤』第4版(2001・丸善)』

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