ユソウボク(英語表記)guaiacum(tree)
Guaiacum officinale L.

改訂新版 世界大百科事典 「ユソウボク」の意味・わかりやすい解説

ユソウボク (癒瘡木)
guaiacum(tree)
Guaiacum officinale L.

中南米に分布するハマビシ科常緑樹で,材や樹脂が利用される。高さ15mに達することのある小高木だが,生長は遅い。偶数羽状複葉を対生し,小葉は2~3対で,広倒卵形,革質,全縁で長さ約3cmほどである。花は枝端に散状につき,淡青色で,径1.5cmほど。果実は液果で黄あるいは橙色に熟す。辺材は黄色であるが,心材は帯緑褐色で硬く密で,酸味と芳香がある。アメリカではリグナムバイタlignum vitaeの名で呼ばれ,重硬で水に沈み,海水に耐えるので,かつては船のスクリューの軸に重用された。樹脂を含み,潤滑油を必要とするような機械的な部分を形成するのにも好適な木材とされ,また家具や小細工物にも利用された。木材にはサポニングッタペルカに似た樹脂を含み,薬用とされ,特に化学的な治療薬が発見されるまでは梅毒の薬として有名であった。樹脂はグアヤク樹脂ユソウボク樹脂英名guaiac,guaiacum(resin))と呼ばれ,グアコニック酸などを含み,油脂酸化防止剤にされ,また材や樹皮と同様,薬用にされた。

 西インド原産のバハマユソウボクG.sanctum L.(英名(Bahama)lignum vitae)もユソウボクに類似し,同じ用途に利用されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ユソウボク」の意味・わかりやすい解説

ユソウボク(癒瘡木)
ユソウボク
guaiacum; lignum vitae

ハマビシ科の Guaiacum officinaleG. sanctumの材についた名である。両種とも西インド諸島,南アメリカ北部海岸に自生する常緑高木で,木部の心材はグアヤコン酸その他の樹脂分を含み,梅毒の治療に用いた。また多くの病気にきくとされて,「聖なるインドの木」「生命の木」ラテン語でリグヌム・ビタエと呼ばれた。樹脂は酸化により青紫色を呈する性質があるので,そのチンキ酸化剤などの検出試薬に用いる。

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世界大百科事典(旧版)内のユソウボクの言及

【軸受】より


[特殊な軸受]
 軸受には各種の特殊なものがある。例えば,船尾管軸受(船の推進軸が船外に出るところに用いる)には昔から水潤滑性のよいリグナムバイタ(ユソウボク)と呼ばれる木材の軸受やゴムを用いたゴム軸受などが用いられている。プラスチック軸受には潤滑を要するものと要さないものがあり,前者ではフェノール樹脂,後者ではナイロン,テフロン,アセタール樹脂などが軸受材料として用いられる。…

※「ユソウボク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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