日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨコスジイシモチ」の意味・わかりやすい解説
ヨコスジイシモチ
よこすじいしもち / 横筋石持
twinbar cardinalfish
[学] Apogonichthyoides sialis
硬骨魚綱スズキ目テンジクダイ科コミナトテンジクダイ亜科マンジュウイシモチ族カクレテンジクダイ属に属する海水魚。伊豆大島から鹿児島湾の太平洋側、奄美(あまみ)大島、八重山(やえやま)諸島、朝鮮半島南岸、台湾、中国、フィリピンなど西太平洋に分布する。体は著しく高く、側扁(そくへん)し、体高は体長の約42~44%。頭は大きく、頭長は体高に等しいか、すこし短い。吻長(ふんちょう)は眼径より短い。口は普通大で、上顎(じょうがく)の後端は目の中央下付近に達する。上主上顎骨はない。上下両顎は小さい歯の歯帯を形成し、犬歯はない。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の縁辺は鋸歯(きょし)状。鰓耙(さいは)は上枝に1本、下枝に8本。頭部と体の鱗(うろこ)は櫛鱗(しつりん)。側線はよく発達し、尾柄(びへい)まで達する。側線有孔鱗数は26枚。背びれは胸びれ基底上方から始まり、2基でよく離れ、第1背びれは7棘(きょく)、第2背びれは1棘9軟条。臀(しり)びれは第2背びれ起部下方から始まり、2棘8軟条。胸びれは15軟条。腹びれは長くて肛門(こうもん)付近に達する。尾びれの後縁はすこしくぼむ。体は一様に暗紫褐色。体側に2本の黒褐色の横帯があり、第1帯は第1背びれの前縁から、第2帯は第2背びれ前縁から腹面まで伸びるが、成長につれて不鮮明になる。尾びれ基底中央部に瞳孔(どうこう)より小さい黒色斑(はん)がある。腹びれは黒く、前縁は白い。水深8~15メートルの岩や岩礁の周りの砂泥底で、単独あるいは小さい群れで生息する。最大全長は約14センチメートルになる。内湾の泥底の転石の周りに単独で潜み、大きい群れをつくることはない。
2000年、南アフリカの魚類研究者オフェル・ゴンOfer Gonは本種の学名Apogon cathetogrammaをApogon sialisのシノニム(同種異名)とした。その後、2014年(平成26)に、魚類研究者の馬渕浩司(まぶちこうじ)(1971― )らがDNAの分析結果に加えて、前鰓蓋骨の腹縁が骨質であることなどの形態的特徴から、本種は長く慣習的に使用されてきたコミナトテンジクダイ属(旧、テンジクダイ属)Apogonからカクレテンジクダイ属Apogonichthyoidesに変更された。本属は胃と腸が淡色であることで、これらが黒色のツマグロイシモチ属Jaydiaやスジイシモチ属Ostorhinchusと区別できる。なお、イシモチは高知県、和歌山県などで使われているこの類の呼称に由来する。
[尼岡邦夫 2023年9月20日]