日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラージー」の意味・わかりやすい解説
ラージー
らーじー
Abū Bakr Muhammad ibn Zakariyyā al Rhāzi
(854ころ―925/935)
9世紀後半から10世紀前半のイスラムの医学者、錬金術師。ラテン名はラーゼスRazes。テヘラン近くのライで生まれ、ライとバグダードで臨床医として活躍した。医学理論ではガレノスを信奉し、その知識をヒポクラテスの医学知識と結び付けた。化学を医学に応用し、医療化学の祖となった。著作は多いが、重要なのは『関連の書』Kitāb al-hāwīで、ギリシア、インドの医学と彼自身の知見を含む医学百科事典である。主としてギリシア科学についてまとめた『アル・マンスールの書』Kitāb al-Mansūrīや、天然痘とはしかを論じた論文などもある。このほか、比重についての研究、化学器具の一覧表の作成、化学的物質の分類なども手がけた。
[平田 寛]