リムド鋼(読み)りむどこう(その他表記)rimmed steel

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リムド鋼」の意味・わかりやすい解説

リムド鋼
りむどこう
rimmed steel

炭素含有量の低い、いわゆる軟鋼の製造の際にマンガンで軽く脱酸してから固化させたもので、鋳塊(インゴット断面の外殻が純鉄で縁どり(リムrim)されている。溶鋼には炭素とともに微量酸素が含まれるが、凝固の際に固体液体との界面に炭素と酸素が濃縮されて一酸化炭素が発生し、これが浮上するために沸騰現象がおこる。これをリミングアクションrimming actionといい、この現象のために純鉄のリム層が形成される。この鋼塊(インゴットingot)を圧延して得られる鋼板表面は純鉄で覆われて美しく、また良好な塗装が得られるが、内部不純物が集まっているので全体としての材力は十分脱酸したキルド鋼に比べて低い。

須藤 一]

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化学辞典 第2版 「リムド鋼」の解説

リムド鋼
リムドコウ
rimmed steel

鋼塊は鋳込時の脱酸の有無によってリムド鋼とキルド鋼に大別される.リムド鋼とは,脱酸をまったく行わないか,あるいはごく微量の脱酸剤添加後に鋳込まれた鋼塊である.溶鋼中の酸素溶解量は脱酸をしていないために非常に多く,固体状態での溶解度以上であるので,凝固時に溶解炭素と反応してCOガスとなって鋼中より放出される.このガス発生は非常にはげしく,リミングアクションとよばれている.凝固後の鋼塊のマクロ組織は,鋳型に密接している部分は比較的純鉄に近い組成の外殻(リム層)ができており,これがリムド鋼の語源である.また,その内側には鋳型壁に垂直方向に伸びた管状気泡が並んでいるのが特徴である.この鋼塊は偏析がいちじるしく,気泡末端に介在物を捕獲している場合も多い.ただし,この気泡内のガスは純COガスであるので内面が清浄であり,熱間圧延の際に完全につぶれてしまい,鋼の欠陥とはならない.脱酸剤を用いないためコストが安価で,操業も簡単なため偏析があまり問題とならないような低炭素鋼がこれにあてられる.

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百科事典マイペディア 「リムド鋼」の意味・わかりやすい解説

リムド鋼【リムドこう】

縁付(ふちつき)鋼とも。溶鋼の脱酸にフェロアロイなどを用いた脱酸程度の低い鋼。鋼塊に鋳込むときおよび凝固中に炭酸ガスを発生し,外側に縁(リム)という比較的不純物や気泡(きほう)のない層を形成しつつ凝固,中心部は不均質となる。この鋼の製品は表面が良好なので,圧延のまま使用する鋼材に向く。→キルド鋼
→関連項目鋼塊

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リムド鋼」の意味・わかりやすい解説

リムド鋼
リムドこう
rimmed steel

縁つき鋼ともいう。製鋼作業の終りで,ほとんど脱酸しないでつくられる安価な鋼。溶鋼中に酸素と炭素が反応して Coガスが発生するので,攪拌をしながら凝固していく。外層は不純物が少く,リム (縁) 状に固まり,鋼塊の表面はきれいであるが,管状気泡がその内側に沿って (リム状) 生じる。内部は不純物が多く,特に鋼塊頂上には不純物の偏析ができる。部位により性質が不均一であるため,製品の機械的特性などについても影響を及ぼす。一般に表面を削り取って使用する機械材料などには不向きであるが,表面がきれいなことが要求される薄板用や,圧延されたままで使用される建築用鋼材とされる。

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改訂新版 世界大百科事典 「リムド鋼」の意味・わかりやすい解説

リムド鋼 (リムドこう)

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世界大百科事典(旧版)内のリムド鋼の言及

【インゴット】より

…連続鋳造は,非鉄金属では早くから行われてきたが,近年では鉄鋼にも普及し,1980年には日本の粗鋼生産量の60%以上が連続鋳造で生産されるようになった。 造塊法でつくる鉄鋼のインゴットには,製造上からキルド鋼killed steel,セミキルド鋼semi‐killed steel,リムド鋼rimmed steel,キャップド鋼capped steelに分けられ,それぞれ溶鋼の脱酸形式が異なり,独特の凝固パターンを示している(図)。製鋼法における重要な反応は,溶鉄に添加された酸素が溶鉄中の炭素と化合してガス(一酸化炭素)を生ずる反応である。…

【製鉄・製鋼】より

…下注法はキルド鋼など良質の鋼塊をつくる場合に多く用いられる。 鋼塊は溶鋼の脱酸形式によってリムド鋼,キルド鋼,セミキルド鋼に分類される。リムド鋼は低炭素鋼で,鋳込み,凝固中にガスを放出しつつ固まり,周辺部にリム層という不純分が少なく気泡もない層ができるが,その内面に気泡が散在し,中心部は不均質となる。…

※「リムド鋼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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