改訂新版 世界大百科事典 「リョウメンシダ」の意味・わかりやすい解説
リョウメンシダ
Arachniodes standishii(Moore)Ohwi
日本各地の山地の林床に生じ,大群落をつくることが多いオシダ科の常緑多年生シダ植物。朝鮮半島南部にも分布する。細かく切れこんだ葉の裂片が葉裏に整然と並ぶため,裏面のほうがかえって立派に見えるので両面シダの名がある。根茎は短く,横向きで,しばしば走枝状の不定芽を出して繁殖する。葉は大型で,楕円形から卵状楕円形,鋭尖頭,長さ80~150cmに達する。鱗片は細く,葉柄下部以外ではまばらである。胞子囊群は葉身の下部から上方にかけてつき,葉脈に頂生し,包膜は円腎形で全縁。胞子は初冬に熟し,関東以南では初春まで葉に残ることがある。細かく切れこんだ,ゆったりとした葉形と,やわらかな色調の緑が美しく,観賞用に広く栽培される。耐寒性は強く,本州中部でも露地で十分育つが,美しく育てるには空中の湿度を高湿で一定にし,太陽の直射を避けるとよい。方言でカグマと呼ばれ,干した葉は便所の落し紙として使われた。
執筆者:光田 重幸
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報