イギリスのスパイ小説家。本名、デイビッド・ジョン・ムーア・コーンウェルDavid John Moore Cornwell。南イングランドのドーセット州プールに生まれる。スイスのベルン大学を卒業後、オックスフォード大学で法律を学んだのち、1956年からイートン校で2年間教鞭(きょうべん)をとる。その後、1959年から外務省書記官となり、旧西ドイツのボンに赴任した。1963年から2年間はハンブルク領事を務める。大使館勤務のかたわら小説を書き始め、1961年に発表した処女作『死者にかかってきた電話』がCWA(イギリス推理作家協会)シルバー・ダガー賞を受賞。『寒い国から帰ってきたスパイ』(1963)は、それまでの活劇娯楽色の強いスパイ小説とは一線を画した新しいスパイ小説として絶賛された。冷戦時代における諜報戦のリアルな実態とスパイたちの姿を等身大に描いたこの作品は、CWAゴールド・ダガー賞、MWA(アメリカ探偵作家クラブ)長編賞、サマセット・モーム賞を受賞した。その後、『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』(1974)、二度めのCWAゴールド・ダガー賞を受賞した『スクールボーイ閣下』(1977)、そして『スマイリーと仲間たち』(1980)の「スマイリー三部作」をはじめ、『リトル・ドラマー・ガール』(1983)、『パーフェクト・スパイ』(1986)など、現実の国際政治を背景に、謀略と裏切りの渦中にうごめくスパイたちを描き続けた。冷戦終了後も、武器輸出をテーマにした『ナイト・マネジャー』(1993)、チェチェンを舞台にした『われらのゲーム』(1995)、パナマ運河返還をめぐる物語『パナマの仕立屋』(1996)など、スパイ小説の枠を越えた意欲的な作品を発表している。1984年にはMWA巨匠賞、1988年にはCWAダイヤモンド・ダガー賞を受賞した。
[吉野 仁]
『田口俊樹訳『パナマの仕立屋』『シングル&シングル』(1999、2000・集英社)』▽『宇野利泰訳『死者にかかってきた電話』『寒い国から帰ってきたスパイ』(ハヤカワ文庫)』▽『菊池光訳『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』(ハヤカワ文庫)』▽『村上博基訳『スクールボーイ閣下』『スマイリーと仲間たち』『リトル・ドラマー・ガール』『パーフェクト・スパイ』『ナイト・マネジャー』『われらのゲーム』(ハヤカワ文庫)』
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