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武器輸出(読み)ぶきゆしゅつ

百科事典マイペディアの解説

武器輸出【ぶきゆしゅつ】

外国に武器を売却することであるが,無償の武器援助を含めた武器移転全般をさすことも多い。武器その他の軍需品の製造・販売で利益を得る〈死の商人〉は第2次大戦以前から暗躍したが,戦後は大国の政府による管理下での武器援助・輸出が冷戦下で広く行われた。とくに1960年代から1970年代以降は米ソを中心とする武器移転の多くが第三世界向けとなり,両陣営は勢力圏を競ったが,これも次第に有償化されたため,1970年代以降の高価な新兵器の一般化に伴って巨大な市場が形成されている。また米国は先進国向けの場合,1950年代以降はライセンス生産輸出方式を多く採用している。軍縮・安全保障の見地から武器移転の透明度を高める試みは,国際連盟(同規約23条D項)の下でも1925年-1937年に実施されたが,国際連合においては通常兵器輸出の透明度を高める研究の実施が1988年総会決議で採択され,湾岸戦争後の1991年に国連軍備登録制度の創設が決まり,翌年発足した。またストックホルム国際平和研究所の《SIPRI年鑑》は武器輸出のデータを毎年分析している。1997年の武器輸出総額は約251億5600万ドルである。なお,日本では1967年〈武器輸出三原則〉を閣議決定し,紛争当事国や国連決議により禁じられている国などには輸出せずと表明したが,1983年に対米武器技術供与はその例外とすることを決めた。さらに2011年の民主党政権も三原則を緩和し,米国以外の国とも共同開発可能とした。2013年3月第二次安倍内閣は,米国をはじめ9ヵ国で共同開発中の,自衛隊の次期主力戦闘機F35ステルス戦闘機のエンジンやレーダーの部品製造・輸出を認める方針を発表,これを武器輸出三原則の例外とするとした。安倍内閣は,国連憲章を遵守する平和国家として,という憲章遵守を武器輸出の可否の基準とするとしたが,これに対して三原則の完全な骨抜きにつながるという批判が出された。しかし,安倍内閣は14年4月武器輸出三原則に代わる〈防衛装備移転三原則.〉を正式に閣議決定。旧三原則での原則輸出禁止を撤廃し一定条件に沿う輸出を認める方針を明確にした。旧三原則は1967年に策定され,三木内閣が76年,武器輸出を原則禁止とした。その後,輸出する場合は個別に官房長官談話を出して例外を認めて公表しきたが新原則では新たに三つの条件を定め,それに沿えば,武器の輸出を認め公表も重要案件に限られる。新原則は輸出の条件として,(1)条約や国連安保理決議に違反する国には輸出しない。(2)輸出は,平和貢献や日本の安全保障に資する場合などに限定し,厳格に審査する。(3)原則として,日本の同意なしの目的外使用や第三国移転がないよう管理するとしている。また新原則は前文で〈我が国の平和と安全は我が国一国では確保できず,国際社会も我が国が積極的な役割を果たすことを期待している.〉としている。安倍首相が唱える〈積極的平和主義.〉の具体化であり,首相がめざす集団的自衛権の行使容認と同じ文脈にある。政府が新原則で主に想定しているのは,ハイテク化と高額化が進む最新鋭兵器の国際的な共同開発への参加といえる。輸出禁止の具体例には,対人地雷禁止条約やクラスター爆弾禁止条約などの違反国,北朝鮮やイランなど国連決議で輸出が禁止された国と紛争当事国がある。輸出先として想定するのは,同盟国の米国やNATO加盟国など友好国で,こうした国々との武器の共同開発や生産に参加しやすくするのが主な狙いである。自衛隊が国連平和維持活動(PKO)で使用した重機の提供なども可能になる。また武器輸出を審査する仕組みとして,国家安全保障会議(NSC)が審査に加わり,重要な案件ではNSC構成メンバーの総理大臣,官房長官,外務,防衛の4大臣と経産相らの閣僚会議で最終的に判断されることになる。これは平和憲法を基礎とする武器輸出の原則禁止から,条件を満たせば認めるという百八十度の方針転換といえよう。新原則では,国連安保理が紛争当事国と認めない限り,禁輸の対象にはならない。

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世界大百科事典 第2版の解説

ぶきゆしゅつ【武器輸出 arms exports】

以前は外国に武器を売却することを武器輸出と呼び,外国に無償で武器を供与する武器援助とは区別する傾向があったが,近年後者の比重がいちじるしく減少してきたことから,外国への有償・無償の武器移転を一括して武器輸出と呼ぶ慣行が一般的となった。また,輸出入を併せて武器貿易arms tradeという言葉も一般化しているが,この場合も統計上は無償移転を含めるのが普通である。第2次世界大戦前の武器輸出はもっぱら商業的利益の追求をめざす特定の業者によって行われることが多かった(これらの業者の暗躍ぶりはしばしば〈死の商人〉と呼ばれた)。

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