日本大百科全書(ニッポニカ) 「レ・ファニュ」の意味・わかりやすい解説
レ・ファニュ
れふぁにゅ
Sheridan le Fanu
(1814―1873)
アイルランドの怪奇小説家。トリニティ大学在学中から小説に手を染め、生涯に12編の長編と数多くの短編を書いた。ほとんどが怨霊(おんりょう)や精神障害などをテーマにしたもので、生前はウィルキー・コリンズに匹敵するほどの人気を得たが没後忘れられ、半世紀ののちM・R・ジェームズの紹介によってリバイバルした。長編『アンクル・サイラス』(1864)、『ワイルダーの手』(1864)は、古風な心理スリラーで、ゴシック小説の正統的後継者の面目を示している。短編では『吸血鬼カーミラ』『緑茶』などが知られる。
[厚木 淳]
『平井呈一訳『吸血鬼カーミラ』(創元推理文庫)』▽『小池滋訳『レ・ファニュ傑作集』(1983・国書刊行会)』