日本大百科全書(ニッポニカ) 「レーフェ」の意味・わかりやすい解説
レーフェ
れーふぇ
Gerard Kornelis van het Reve
(1923―2006)
オランダの小説家。第二次世界大戦後のオランダ文壇の代表的作家。共産主義を信奉する家庭に育つが、のちにそれに楯突(たてつ)く。「同性愛者であることとカトリック教への改宗」という個人的、社会的タブーを破ることが作品の重要な構成要素。文体の流麗さが特徴。そこには、新・旧両文体の巧みな組合せと、冒涜(ぼうとく)的表現と神聖な表現を織り交ぜることによって醸し出される両義的なアイロニーがある。また、自身の人生の神話化も特徴。戦後世代の社会への怒り、憎しみ、精神的安定をみいだしえない焦りを描いた近代主義的な小説『宵』(1947)で脚光を浴びる。ここでは、観察が肉体的、感覚的である。この作風は自叙伝的中編『ウェルター・ニーランド』(1949)に続く。『憂鬱(ゆううつ)症』(1951)中に中傷的表現があるとして外国研修を拒否されて、イギリスに移住し短編集『曲芸師その他』(1956)を書く。1962年に自身の同性愛とカトリック教改宗に関する書簡を公表、これは1963年に書簡集『終局に向かって』という表題で刊行される。書簡集『神への近づき』(1966)中の「ロバの姿の神とアナル(肛門)性交した」の文で、神を冒涜したかどで裁判にかけられるが、放免される。その後の作品に、書簡とおとぎ噺(ばなし)とを織り交ぜて自身の伴侶に語るという小説形式をとる『愛の表現法』(1972)、『サーカスの少年』(1975)、現代社会の若者の姿をとらえた『心配する両親』(1988)、既述の『神への近づき』で予告した『すみれ色と死の書』(1996)など。1968年にホーフト文学大賞受賞。ベルギーで死去。
[近藤紀子]