日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ロイヤル・ソサイエティー
ろいやるそさいえてぃー
The Royal Society
イギリスでもっとも古くからある自然科学の学会。王立協会と訳されることが多い。ピューリタン革命のさなかに、ロンドンのグレシャム・カレッジとオックスフォードに、宗教と政治に関して当時行われていた不毛な論争を嫌った人々の非公式なサークルがつくられていた。1660年11月28日、この二つのサークルが合流し、物理学者R・ボイルや経済学者W・ペティらを含む12名の会員でスタートした。1662年チャールズ2世の勅許状を得てロイヤル・ソサイエティーと称し、翌年には会員数119名に急成長したが、学者が占める割合は約8%であった。1665年に機関誌『Philosophical Transactions』を創刊した。科学史に名を残した多くの科学者がこの協会に属したが、I・ニュートンは1703~1727年会長を務めた。19世紀なかばには会員の選抜規則が改められ、高い学問的業績が要求されるようになり、「科学者の団体」へと変容した。
ロイヤル・ソサイエティーでは、現在次の七つの目的がうたわれている。
(1)科学のすばらしさを認知すること
(2)最先端の科学研究とその応用を支援すること
(3)国際的な交流を促進すること
(4)社会のなかでの科学、工学と技術の役割を高めること
(5)科学の市民的理解を促進すること
(6)科学、工学、技術に対する権威ある認定をすること
(7)科学の歴史の研究を促進すること
2001年7月時点で1216名のイギリス国内の会員(フェロー)と113名の外国会員からなり、寄付金と政府支出予算によって多岐にわたる活動が展開されている。たとえば機関誌や書籍を出版し、18名の研究教授職や380名の研究員職のポストを提供し給料を支払っている。またビーグル号の航海(1831~1835)で知られるように古くから探検隊を派遣してきた。さらにテーマに応じて毎年17の賞を出し、賞金付きの12の招待講演をもっている。賞ではコプリー賞、ランフォード賞、デービー賞、ダーウィン賞、マイケル・ファラデー賞などがあり、講演ではクルーニアン講演(生物科学系)、ベーカリアン講演(物理科学系)、バナール講演(科学の社会的機能)、レーウェンフック講演(微生物学)、メダワー講演(科学の哲学。3年ごと)などがよく知られている。
[髙山 進]
『大野誠著『ジェントルマンと科学』(1998・山川出版社)』▽『マイケル・ハンター著、大野誠訳『イギリス科学革命――王政復古期の科学と社会』(1999・南窓社)』