日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロケット砲」の意味・わかりやすい解説
ロケット砲
ろけっとほう
artillery rocket
無誘導で飛翔体を発射する火器。ロケット砲は誘導ミサイルや火砲に比べて一般的に命中精度が劣るが、車両に多連装搭載が可能なため機動性が高く、目標に対して短時間かつ広範囲に多量の弾薬を集中することができる。推進手段には液体ロケットモーターと固体ロケットモーターがあるが、即応性、量産性、取扱い性などの観点から通常固体ロケットモーターが使用されている。また、ロケット砲には、延伸機能のないフリーロケットと、弾底に内蔵されたロケットモーターより射程を延伸する噴進弾(RAP=Rocket Assisted Projectile)がある。ロケット砲の代表例、多連装ロケットシステム(MLRS=Multiple Launch Rocket System)は、弾頭に知能化子弾を搭載して遠距離に分散した敵部隊を瞬時に制圧することができ、その最大射程は約30キロメートル以上といわれている。陸上自衛隊も1992年(平成4)からMLRSの導入に着手したが、M26ロケット弾(子弾644個内蔵)がクラスター爆弾禁止条約に抵触することから、その補完措置としてM31ロケット弾を導入した。
[村井友秀]