クラスター爆弾(読み)くらすたーばくだん(英語表記)Cluster Bomb Unit

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラスター爆弾」の意味・わかりやすい解説

クラスター爆弾
くらすたーばくだん
Cluster Bomb Unit

航空機、地対地ロケット弾、砲弾に搭載され、ディスペンサーとよばれる本体から多数の子弾を散布して、広範囲の目標を破壊する親子弾タイプの爆弾。集束爆弾、CBUともいう。ベトナム戦争当時は「ボール爆弾」とよばれていた。2008年5月に採択された「クラスター弾に関する条約」(クラスター爆弾禁止条約、オスロ・プロセス)では、子弾10個未満、子弾の重量が4キログラム以上、子弾が単一目標を探知・攻撃するもの、電気式の自己破壊機能をもつもの以外は使用、生産、貯蔵、保有、移譲を禁止しており、さらには現有クラスター爆弾を使用できる猶予期間はいっさい認めず、原則として8年以内に廃棄することを義務づけている。

 クラスター爆弾は、投下されて一定の時間が経過すると信管が作動してディスペンサーが上下に分離し、遠心力などによって内部に収容していた多数の子弾が広範囲に散布される。対人クラスター爆弾であるCBU-58(760ポンド)の場合、直径3インチの球形の子弾がディスペンサーに650発入っている。子弾の中には100グラムの炸薬(さくやく)と多数の鋼球が充填(じゅうてん)されている。ディスペンサーから散布された子弾は地面に落ちると同時に爆発し、飛散する破片と鋼球によって周辺の人員を殺傷する。近距離で被爆した場合、無数の破片によって人間が立ち木に貼り付いてしまうともいわれている。多目的クラスター爆弾であるCBU-87(950ポンド)のディスペンサーには、ビール缶サイズの子弾が202発入っている。散布された子弾は目標に弾着すると同時に爆発し、成型炸薬弾頭が装甲を貫通する。さらにスチールケースと発火性物質(ジルコニウム)が飛散して目標を破壊し燃焼させる。CBU-87は湾岸戦争で約1万発が使用された。アメリカ空軍のCBU-87調達価格は1発当り約1万4000ドルである(1990)。一方、CBU-89(720ポンド)は地雷散布用のクラスター爆弾である。ディスペンサーには直径5インチで円筒状の対戦車地雷が72発、対人地雷が22発入っている。

 なお散布後一定時間が経過すると時限信管が作動して地雷を無効化することができる。一般的に散布された子弾の不発化率は約5%といわれている。子弾が不発の場合、友軍地上部隊が進撃する際の障害物になり、また戦闘終了後に爆発して民間人に被害が発生する危険性があり、コソボアフガニスタン、イラクでは不発弾の処理が問題になっている。2003年11月特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW=Convention on Certain Conventional Weapons)締約会議においてクラスター爆弾を含む爆発性戦争残存物(ERW=Explosive Remnants of War)に関する議定書が採択され2006年に発効した。一方、クラスター爆弾禁止条約については日本も2008年(平成20)12月に署名し、その後批准している。同条約は2010年8月1日に施行された。2015年3月25日時点で116か国が署名、91か国が批准している。

 なお、自衛隊が保有していたクラスター爆弾は、多連装ロケットシステム(MLRS)用のM26ロケット弾(子弾644個内蔵)、155ミリ榴弾(りゅうだん)砲から発射する多目的榴弾(同数十個)、対戦車ヘリコプターAH-1S用の70ミリロケット弾(同9個)、航空自衛隊の戦闘機から投下されるCBU-87/Bクラスター爆弾(同202個)の4種類である。2015年2月、防衛省はすべてのクラスター爆弾の廃棄を完了した。補完措置としてMLRS用のM31ロケット弾、戦闘機搭載用の精密誘導弾JDAMを導入している。

[村井友秀]

『宮本勲編著『U.S.ウエポン・ハンドブック』(2000・原書房)』『目加田説子著『行動する市民が世界を変えた――クラスター爆弾禁止運動とグローバルNGOパワー』(2009・毎日新聞社出版)』


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