アクリロニトリル・ブタジエンゴム(読み)あくりろにとりるぶたじえんごむ(英語表記)acrylonitrile-butadiene rubber

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

アクリロニトリル・ブタジエンゴム
あくりろにとりるぶたじえんごむ
acrylonitrile-butadiene rubber

アクリロニトリルブタジエン共重合体ASTM(アメリカ材料試験協会)の規格による略称NBRニトリルゴムともよばれる。低温で分解してラジカルをつくるようなレドックス系開始剤を用いた乳化重合により製造される。NBRは1934年ドイツで最初に製造され、ブナNとよばれた。第二次世界大戦中にアメリカでもGR-Aの名称で生産が始められた。NBRは特殊ゴムの一つであり、耐油性がとくに優れている。アクリロニトリル含有量によって、極高ニトリル(43%以上)、高ニトリル(36%以上43%未満)、中高ニトリル(31%以上36%未満)、中ニトリル(25%以上31%未満)、低ニトリル(25%未満)の5種類に分けられる。アクリロニトリルの含有量の多いほど耐熱性、耐油性、耐摩粍性、耐ガス透過性、耐老化性がよく、引張り強度や硬さが増すが、反発弾性や低温特性は低下する。一般的には耐オゾン性や耐熱老化性が劣る。耐水性や耐アルコール性が優れ、ケトンエステルなどに対する耐溶剤性が劣る。用途は、自動車部品が多く、耐油性が要求される燃料ホース、オイルシールパッキングガスケットブランケットゴムロールベルト靴底などのほか、NBRラテックスは、接着剤、紙や皮革の処理剤などにも使われる。NBRの欠点を補うために、第三成分としてメタクリル酸を加えたカルボキシ変性NBR、ポリ塩化ビニルをブレンドした改質NBR、および水素添加したH‐NBRなどがつくられている。

[福田和吉]

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改訂新版 世界大百科事典 の解説

アクリロニトリル・ブタジエンゴム
acrylonitrile-butadiene rubber

略称NBR。アクリロニトリルとブタジエンを共重合させて得られる合成ゴムで,一般にニトリルゴムnitrile rubberとも呼ばれる。耐油性のすぐれた特殊ゴムの一種である。1930年代にドイツで研究,工業化されたもので,初期にはブナN(Buna N),のちにペルブナンPerbunanという商品名で市販された。太平洋戦争中はアメリカにおいて政府管理のGovernment Synthetic Rubber Programにより軍需用としてGR-Aという名称で量産された。日本においても太平洋戦争中は軍需用に研究され,パイロットプラント規模で製造するところまできたが本格生産までにはいたらず,戦後,59年から商業生産が開始された。重合法としては,ラジカル重合開始剤を用いた乳化重合法が採用されている。NBRはきわめてすぐれた耐油性を示すが,この特性は成分のアクリロニトリルによるもので,その含有率の増加にしたがって耐油性は向上するが,耐寒性,加工性は低下する。標準的な含有率は25~30%程度で,これを中ニトリル,24%以下を低ニトリル,31~35%を中高ニトリル,36~42%を高ニトリル,43%以上を極高ニトリルと呼ぶ。工業用機器の耐油性ホース,パッキング,オイルシール,ロールなどに多量使用されている。身近なものとしては自動車のガソリン用チューブとして使用されており,近代生活に欠くことのできぬ材料である。NBRは,ガソリン,機械油などの石油系油にはよく耐えるが,ケトン,エステル,アルコールなどの極性溶媒に対する耐性は低い。
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化学辞典 第2版 の解説

アクリロニトリル-ブタジエンゴム
アクリロニトリルブタジエンゴム
acrylonitrile-butadiene rubber

略称NBR.ブダジエン-アクリロニトリルゴム,ニトリルゴムともいう.アクリロニトリルとブタジエンの共重合体で,耐油性の合成ゴムとしてもっとも一般的に使われている.工業的には,低温乳化重合でつくられる.アクリロニトリル含有量により耐油性が異なり,一般に15~50% のものが耐油性ゴムとして用いられる.天然ゴムに比較して耐溶剤性,耐摩耗性,耐熱性,耐オゾン性などの点がすぐれている.おもな用途は,ガスケット,燃料や鉱油用ホース,オイルシール,工業用ゴムロール,コンベヤーベルト,耐油性防振ゴムなどである.[CAS 9003-18-3]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア の解説

アクリロニトリル・ブタジエンゴム

NBR(acrylonitrile-butadiene rubberの略),またはニトリルゴムとも。アクリロニトリルとブタジエンの共重合によって得られる合成ゴム。耐油性,耐摩耗性が天然ゴムより高く,工業用機器,自動車部品の送油管,パッキン,シールなどに不可欠。もともと天然ゴムの産出地を自国領土・植民地に持たなかったドイツで1930年代に開発され,ブナNと名づけられ(後ペルブナン),米国ではGR-Aと呼ばれた。ベンゼン,四塩化炭素以外の溶剤に耐える。→スチレン・ブタジエンゴム
→関連項目合成ゴム

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