アコニット酸(読み)アコニットサン

化学辞典 第2版 「アコニット酸」の解説

アコニット酸
アコニットサン
aconitic acid

C6H6O6(174.11).2-カルボキシグルタコン酸に相当するトリカルボン酸.通常,カルボキシル基トランス形のものである.キンポウゲ科トリカブトAconitumトクサ,サトウキビ,テンサイなどに含まれており,トランス形から無水物を経て不安定なシス形にかえることができる.クエン酸硫酸脱水すると得られるが,糖みつからも得られる.葉片状の結晶.融点194~195 ℃(分解).pKa1 2.8,pKa2 4.66(25 ℃).エタノールに易溶,エーテルに不溶.融点まで加熱すると無水イタコン酸になり,また水と180 ℃ にまで加熱するとイタコン酸と二酸化炭素を生じる.cis-アコニット酸は融点125 ℃.加熱すると容易にトランス形にかわる.ゴムや樹脂可塑剤に用いられる.[CAS 499-12-7]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「アコニット酸」の意味・わかりやすい解説

アコニット酸 (アコニットさん)
aconitic acid

低分子生体物質の一種。2種の立体異性体シス型,トランス型がある。生理的に重要なのは,比較的不安定なシス-アコニット酸で,クエン酸回路の酵素であるアコニターゼ作用により,クエン酸およびイソクエン酸から可逆的に生成する。梅酢表面に発育する糸状菌Aspergillus itaconicusはイタコン酸発酵により,シス-アコニット酸からイタコン酸を大量につくる。一方トランス型は安定で,トリカブト属Aconitumやトクサ,サトウキビ,テンサイなどに含まれる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アコニット酸」の意味・わかりやすい解説

アコニット酸
アコニットさん
aconitic acid

化学式は C6H6O6プロピレン-1,2,3-トリカルボン酸ともいう。普通トランス形をとる。シス形はトリカルボン酸サイクル一員でクエン酸-イソクエン酸の異性化中間体として重要な化合物である。トリカブト属の植物や,トクサ,サトウキビ,テンサイなどの植物および糖蜜に含まれる。工業的にはクエン酸の硫酸による脱水で得られる。 194~195℃で分解する葉片状晶。水に可溶,エーテルに難溶。水と 180℃に熱すると,イタコン酸と二酸化炭素に分解するので,イタコン酸製造の原料となる。ブナゴムやプラスチックの可塑剤として利用される。

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栄養・生化学辞典 「アコニット酸」の解説

アコニット酸

 C6H6O6 (mw174.11).

cis型はTCAサイクルのクエン酸→イソクエン酸の代謝過程の中間体である

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