トクサ(その他表記)scouring rush
Equisetum hyemale L.

改訂新版 世界大百科事典 「トクサ」の意味・わかりやすい解説

トクサ (砥草/木賊)
scouring rush
Equisetum hyemale L.

常緑性のトクサ科の多年草和名砥草ケイ酸塩を含んだ茎が物を磨くのに使われることから,砥石に代用できる草の意。茎は直立し,濃緑色で,硬質である。高さ30~100cm,直径5~7mm,ふつう枝を出さない。葉は輪生,互いに合着し,落ちやすい歯片を除いた葉鞘(ようしよう)は長さ4~8mmで,茎に密着し,黒っぽい。胞子囊穂は茎の先端に1個つき,短い楕円体で,長さ6~10mm,無柄,先端はつきでて,はじめは緑褐色,のちに黄色になる。本州中部以北,北海道の,主として山中湿地に生えるが,北半球温帯に広く分布する。茎を温湯で煮て乾かして,物を磨くのに用いる。その他,薬用利尿,下痢止め,眼病に効くという)に使われたり,園芸植物として利用される。

 近縁のイヌドクサE.ramosissimum Desf.は不規則に枝を出す。これに似たミズドクサE.fluviatile L.はむしろスギナに近い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「トクサ」の意味・わかりやすい解説

トクサ
とくさ / 砥草
木賊
common scouring-rush
shave-grass
[学] Equisetum hyemale L.

トクサ科の常緑性シダ。茎は円筒形で分枝せず、濃緑色で高さ約1メートルになる。胞子嚢穂(のうすい)を茎の先端につける。山間の谷川沿いにみられることが多く、湿地を好む。中部地方以北と北海道に産し、北へ行くほど一般的になる。中国北部、シベリア、ヨーロッパ、北アメリカなど、北半球の湿地帯に広く分布する。茎には多量の二酸化ケイ素を含むので堅く、木材や金属の研磨に用いる。中国では古くから薬用にされ、11世紀の本草(ほんぞう)書『嘉祐(かゆう)本草』には眼疾止血などに効くとある。日本でも密蒙花(みつもうか)散、菊花(きくか)散などの漢方薬にトクサが使われる。アメリカのカスケード山地インディアンは、煎汁(せんじゅう)で髪を洗ってシラミよけとし、地下茎の汁は眼病に効くとしている。近年トクサ類は舌癌(がん)や肝臓癌に有効だという報告もなされている。園芸用に庭に植えることも多い。

[栗田子郎]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「トクサ」の意味・わかりやすい解説

トクサ(砥草)
トクサ
Equisetum hyemale; horsetail

木賊とも書く。トクサ科のシダ植物で,北半球の温帯に広く分布し,山地の湿地に生える。日本では中部地方以北から北海道に自生するが,庭園の池の周囲などに栽植されることもある。常緑の厚質の草本で茎の高さ 1mに達する。茎は通常分枝せず,地下をはう根茎から直立する。鱗片状の葉が数個輪生し,互いに癒合して鞘となるが,やがて基部を残して脱落する。胞子嚢穂は茎の先端につき,多数の胞子嚢托から成る。各胞子嚢托には数個の胞子嚢がつく。胞子は球形で糸状の付属物を有し緑色を呈する。付属物は乾燥すると伸びる。表皮に多量のケイ酸塩を含み,硬くてざらつくので,乾燥させて研磨に用いられる。

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百科事典マイペディア 「トクサ」の意味・わかりやすい解説

トクサ

トクサ科の常緑シダ。本州中部以北の湿地にはえる。地下茎から多数出た濃緑色の地上茎は,枝がなく直立し,径約5mm,棒状で,高さ1m内外となり,3〜4cmごとに節がある。葉はごく小さく,節に輪生。夏,茎頂に長楕円形の胞子嚢穂をつける。茎はケイ酸を含み,表面には溝があって,ざらつくので,細工物などをみがくのに用いた。庭に植え観賞する。

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デジタル大辞泉プラス 「トクサ」の解説

とくさ

福島サトルによる短編小説、および同作を表題作とする小説集。2004年、第11回日本ホラー小説大賞にて短編賞佳作受賞。同年刊行の小説集は、ほかに「ナイヤガラ」など3作品を収める。

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世界大百科事典(旧版)内のトクサの言及

【やすり(鑢)】より

…鋼の面に,たがね,ポンチまたはフライス削りによって作った多数の突起を切れ刃としてもつ切削工具。工作物を手仕上げするのに用いられる。JISでは,鉄工やすり,小さい部分の加工用の断面形状の異なるものを5本,8本,10本,12本と組み合わせて一組とした組やすり,手引きのこぎり目立用刃やすり,製材のこやすりを規定している。特殊なものとして回転手持ち工具につけて用いる回転やすりがある。やすりの大きさは呼び寸法(mm)で表し,鉄工やすりは100から50とびに400まである。…

※「トクサ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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