改訂新版 世界大百科事典 「アシュアリー派」の意味・わかりやすい解説
アシュアリー派 (アシュアリーは)
Ash`arī
アシュアリーを祖とするイスラム神学の一派。マートゥリーディー派と並んでスンナ派神学を代表する。その特徴は,理性的思弁(カラーム)によって正統的信条を弁証することにある。もっぱらコーランやハディースの引用に依拠して思弁を排する保守的なハンバル派と,合理主義的立場からそれと異なる信条を採るムータジラ派との中間に位置する。それだけに双方から攻撃を受けた。とくにシリアやバグダードなどでは,ハンバル派の影響が強く,また時には親ムータジラ派的,ないしはそれに接近するシーア派政権によって迫害されたりして,スンナ派神学として現実に受け入れられるまでには長い時間を要した。この派の歴史についてはまだ不明な点が多いが,バーキッラーニーal- Bāqillānī(?-1013),バグダーディーal- Baghdādī(?-1037),イマーム・アルハラマイン,ガザーリー,ラージーFakhr al- Dīn al- Rāzī(1149-1209),イージーal- Ījī(?-1355)などの学者が有名である。
→イスラム学
執筆者:中村 廣治郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報