アシュアリー(読み)あしゅありー(英語表記)Abū al-asan ‘Alī al-Ash‘arī

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アシュアリー」の意味・わかりやすい解説

アシュアリー
あしゅありー
Abū al-asan ‘Alī al-Ash‘arī
(873/874―935)

イスラム神学者。スンニー派神学を代表するアシュアリー派の祖。イラクバスラに生まれ、バグダードで没した。熱心なムゥタジラ派の神学者であったが、40歳のとき、夢で預言者ムハンマド(マホメット)の教えを受け、以後ムゥタジラ派の批判者となった。彼の神学は、決定論、コーラン非創造説、神の正義と賞罰に対する不可知論などで、ムゥタジラ派と異なる。また、その著作『イスラム教徒諸説』にはシーア諸派やムゥタジラ派などの教義が簡潔に整理されており、初期イスラム思想研究のうえで重要である。アシュアリー神学は、彼の死後、バーキッラーニーal-Bāqillānī(?~1013)により、形而上(けいじじょう)学としても完成、ニザーミーヤ学院では主要課目として採用され、イスラム正統派神学を代表するものとなった。

[竹下政孝 2018年4月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アシュアリー」の意味・わかりやすい解説

アシュアリー
al-'Ash`arī, Abū al-Ḥasan `Alī

[生]873. バスラ
[没]935. バグダード
イスラム神学者。ギリシア哲学を吸収してカラームと呼ばれる正統的思弁神学を確立した。唯一の能動者,唯一の原理としての神の全能強調,すなわち,そこでは時空的連続性がまったく否定され,この瞬間における原子結合は次の瞬間におけるそれになんのかかわりもなく,物体のまとまりと持続はただ瞬間ごとの神の意志によるものとされる。

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