アディソン病(読み)アディソンびょう(その他表記)Addison's disease

改訂新版 世界大百科事典 「アディソン病」の意味・わかりやすい解説

アディソン病 (アディソンびょう)
Addison's disease

ときにアディソン氏病といわれ,現在では慢性原発性副腎皮質機能低下症primaryhypoadrenocorticismともいう。1855年T.アディソンによって記録されたため,この名がある。副腎皮質ホルモン欠乏によって起こるもので,全身倦怠,胃腸症状,皮膚の黒化の3症状をおもな特徴とする。発症は30~40歳代に多く,原因には副腎結核,特発性副腎萎縮,副腎の癌,真菌症などがあり,また先天性副腎皮質低形成など先天性のものもある。これらのうち,かつては結核性のものが圧倒的に多かったが,結核そのものの減少とともに副腎の結核も減っている。アディソン病は副腎皮質の90%が侵されたときに発症するといわれ,症状は徐々に出る。症状は副腎皮質ホルモンの欠乏とACTH過剰によって起こり,前者によるものとして,無力症,体重減少,悪心,嘔吐下痢,便秘などの胃腸症状,低血圧,低血糖,感情不安定などが,後者によるものとして皮膚の色素沈着などがある。診断は,症状と,水試験(水を与えて尿量を調べる),血液検査,内分泌検査などの検査結果による。治療は,欠乏している副腎皮質ホルモンの補給で,糖質コルチコイド鉱質コルチコイドなどを用いる。また結核性のものや癌によるものでは原因疾患に対する治療も行う。予後は癌転移によるもの以外は一般に良好である。
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百科事典マイペディア 「アディソン病」の意味・わかりやすい解説

アディソン病【アディソンびょう】

慢性の副腎皮質機能不全症。疲労しやすく,食欲不振,やせ,低血圧,皮膚の色素沈着などをきたす。比較的まれな病気で,副腎結核,癌副腎転移のほか,近年自己免疫患としての特発性副腎皮質萎縮が多く報告される。以前は数年経過で死亡したが,現在はコーチゾンなど副腎皮質ホルモン投与を含む継続的な治療と管理によれば,予後は良好である。
→関連項目低血圧副腎皮質ホルモン副腎皮質ホルモン剤

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世界大百科事典(旧版)内のアディソン病の言及

【アルドステロン】より

…この場合の治療薬には,アルドステロンに拮抗する合成ステロイドのスピロノラクトンが使用されるが,これはカリウム喪失を伴わない良い利尿薬である。逆に,結核,癌転移,自己免疫疾患等が原因でおこる副腎皮質不全症(アディソン病)では,皮質ホルモン全般の欠落症状が現れる。治療には,鉱質,糖質両コルチコイドを投与せねばならないが,鉱質コルチコイドとしては,アルドステロンより効力の弱い11‐デオキシコルチコステロン・アセテートやフルドロコルチゾン・アセテートが用いられる。…

【副腎皮質ホルモン】より

…脳下垂体腺腫からのACTH過剰分泌の結果,副腎からのコルチゾール分泌が増加したり,副腎に生じた腺腫から多量のコルチゾールが慢性的に分泌されると,クッシング症候群を呈する。また,副腎結核や特発性副腎皮質萎縮により,副腎からのコルチゾールの分泌が低下するとアディソン病となる。副腎腺腫から多量のアルドステロンが分泌されると,原発性アルドステロン症となる。…

※「アディソン病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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