アナログコンピューターは,現在広く利用されているディジタル技術を核としたディジタルコンピューターの普及に先だって,シミュレーターや科学技術計算に広く活用されたアナログ技術を核とした計算機である。
数値や変数を長さ,電圧,回転角などのように連続的は物理量に置き換えて,物理現象の数学的関係を用いて相似的に計算する計算機で,もっとも手近な例として計算尺がある。もっとも広く用いられたアナログコンピューターは数値を電圧などの電気量に置き換えて計算し,解は電気量と時間の関係で示される。また,各演算器が演算増幅器operational amplifierを中心に,たとえば積分器,加算器,掛算器などのように計算内容別に用意されており,与えられた問題(主として微分方程式の解法に適する)に対応させて,これらを接続して計算を行えば求める解が得られる。このとき各演算器はすべて同時に並列して計算が行われるので計算速度がきわめて速い。一方,数値を物理量で相似しているので精度に限界があり,10⁻2~10⁻5程度の誤差の混入は免れない。とくに非線形計算や大規模な計算になるほど精度の劣化は大である。これらの欠点を除くためにディジタル技術を導入したり,ディジタルコンピューターを接続してデータ処理性の改善,精度の向上を図ったハイブリッドコンピューターが生まれた。
アナログコンピューターの用途としては,計算速度が速いためにパラメーターを変えることに対して解の変化を容易にとらえることができるので,自動制御などのダイナミックな系の設計やフライトシミュレーター等各種のシミュレーターに用いられた。現在はいずれもディジタルコンピューターに置き換えられている。しかし,これらの中心となっているアナログコンセプトは現在においても重要な基本的概念として,また,演算増幅器はIC化されアナログ計算機能を実現するために今でも単独で広く用いられている。
執筆者:三浦 武雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報
…この場合,ディジタルであることを強調して,ディジタルコンピューターともいう。広義のコンピューターは,アナログ電子回路を利用しておもに数値計算を行うアナログコンピューターを含む。本項は,ディジタルコンピューターに限定して記述する。…
※「アナログコンピューター」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加
9/20 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新