アブサン(英語表記)absinthe[フランス]

精選版 日本国語大辞典 「アブサン」の意味・読み・例文・類語

アブサン

〘名〙 (absinthe)⸨アブサント⸩ 洋酒一種。色は緑色ニガヨモギの花、または葉からしぼりとった液に、茴香(ういきょう)アニスアルコールを混ぜて蒸留して作ったアルコールを七〇パーセント含む、強いリキュール酒。スイスで発明され、ヨーロッパ諸国で製造されたが、中毒性が強いため多くの国で禁止され、現在はニガヨモギを含まないもの(四五度)が多い。
※新聞雑誌‐七一号・明治五年(1872)一二月「当時仏蘭西辺にて『アブサン』と申す酒稍行はれ」

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デジタル大辞泉 「アブサン」の意味・読み・例文・類語

アブサン(〈フランス〉absinthe)

ニガヨモギで味つけした、アルコール分70パーセント前後の緑色のリキュール。毒性があるため、現在はアニスなどで味つけした低アルコール度のものをいう。アプサーント。

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改訂新版 世界大百科事典 「アブサン」の意味・わかりやすい解説

アブサン
absinthe[フランス]

ニガヨモギを主体に種々の薬草,香草類をブランデーなどのスピリッツに配合し,再蒸留して造る酒。一般にはリキュールに分類名称は,ニガヨモギのラテン名アブシンチウムに由来する。やや苦みのある強烈な酒で,緑色を帯びているが,水を加えると乳白色ににごる。アルコール分65~70%。1730年にフランスの医師ピエール・オルディネールによって創製され,97年スイスに創立されたペルノー・フィス社から発売された。その後,解熱用などの薬酒として用いられていたが,麻酔的な酔い心地から愛好者がふえ,1890年代の退廃的雰囲気の中でもてはやされたが,中毒症状を呈するものが続出したため,スイスでは1908年に製造と販売を禁止,15年フランスでも禁止された。その後はニガヨモギを用いず,アルコール分の低い代用品が造られている。
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飲み物がわかる辞典 「アブサン」の解説

アブサン【absinthe(フランス)】


にがよもぎを主に、アニス、アンゼリカフェンネルなどの複数の香草、香辛料をアルコールに浸漬してつくるリキュール。アルコール度数は40~70度で、砂糖を加え、水で割って飲むことが多い。淡い黄緑色で、水を加えると白濁する。18世紀にフランス人の医師ピエール・オルディネールがスイスで薬酒として処方を考案し、1797年にアンリ・ルイ・ペルノが商品化した。フランスをはじめ欧米各国に普及し、多くの芸術家に愛好されたことでも知られるが、にがよもぎに含まれるツヨンが向精神作用を引き起こすことがわかり、長期にわたる習慣的な飲用による中毒性が問題となって、20世紀初頭各国であいついで製造・販売が禁止になり、幻の酒となっていた。その後の研究により規制が見直され、1981年WHOによりツヨンの残存許容量が定められたうえでリキュールににがよもぎを使用することが承認され、現在はその範囲内の製品が製造されている。

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百科事典マイペディア 「アブサン」の意味・わかりやすい解説

アブサン

リキュールの一種。ニガヨモギを主体にウイキョウ,アニス等の香料植物の抽出液をブランデーなどに配合して再蒸留する。1730年フランスの医師ピエール・オルディネールによりつくられ,1797年スイスのペルノー・フィス社から発売された。主産地フランス,スイス。緑色でアルコール分70%前後。ただしニガヨモギには有毒成分があり,多くの国で製造販売が禁止されている。ニガヨモギを含まぬアルコール分45%程度の類似品も販売されている。
→関連項目リキュール

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アブサン」の意味・わかりやすい解説

アブサン
あぶさん
absinthe

アニス系の香りをもつリキュール。18世紀の後半フランスの医師オルジネールが創製したといわれる。本来はアブサン(ニガヨモギ)を用いるが、その成分には習慣性の毒性があるため、欧米諸国では使用が禁止されていたが、その後、条件付きで承認されている。最近ではアニスの実がおもに使用され、これに、カンゾウ(マメ科)、ヤナギハッカ(シソ科)、コエンドロ(セリ科)などの草根木皮類十数種をアルコール分85~90%のスピリッツで浸出してつくる。アルコール分は70~75%あり、緑色の辛口のもので、加水すれば白濁する。

[秋山裕一]

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栄養・生化学辞典 「アブサン」の解説

アブサン

 本来,キク目キク科ヨモギ属のニガヨモギ[Artemisia absinthium]の風味をつけたリキュールであるが,その習慣性が指摘されて,現在はアニスの種子アニシードのエキスなどを混合して製造している.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アブサン」の意味・わかりやすい解説

アブサン
absinthe

アプサント。苦よもぎを主として,その他若干の香料を 70%ぐらいのアルコールに浸漬して造ったリキュールの一種。淡緑色をしており,アニスの香りが強い。食欲増進酒といわれる。

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世界大百科事典(旧版)内のアブサンの言及

【ニガヨモギ】より

…また,ローマ時代から婦人病などの民間薬として栽培された。枝葉に香料を加え,蒸留してアルコールに溶解させたものがアブサンである。苦味配糖体であるアブシンチンabsinthinを含み,大量に摂取すると神経が麻痺するという。…

【薬酒】より

…したがって薬草を酒に浸けこみ薬酒とする技術も古くから開発された。ディオスコリデスの《薬物誌》にみえる例では,白い海藻をブドウ酒に入れ3ヵ月間放置して作る海藻酒(水腫,黄疸,脾臓病薬),過熟しないヨウナシをナナカマド類の実とともにブドウ酒に入れたナシ酒(胃病薬),バラの花を乾燥させてから粉砕し,ブドウ酒に加えたバラ酒(下痢止め),松やにを樹皮とともに細かく刻んで調合したロジン酒(咳止め,浣腸剤),ニガヨモギをブドウ酒に入れて作ったアブサン(肝臓病,黄疸,ヒポコンドリーに有効)など約50種を数える。また野生のキュウリなどを混ぜて作った堕胎酒も載せられている。…

※「アブサン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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