日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニガヨモギ」の意味・わかりやすい解説
ニガヨモギ
にがよもぎ / 苦艾
absinthe
wormwood
[学] Artemisia absinthium L.
キク科(APG分類:キク科)の多年草。ヨーロッパ原産でシベリア南部、カシミールに分布し、ヨーロッパ南部、アフリカ北部、南北アメリカで栽培されている。茎は多く分枝し、高さは1.5メートルに達する。全形はヨモギに似るが、葉をかむと強い苦味があとまで残る。葉柄の基部に仮托葉(かたくよう)はなく、葉の両面には白い絹毛が多い。また、花床にも毛があり、頭花の径は3~5ミリメートルで、高さよりも幅が広い点でヨモギと区別できる。野生のニガヨモギには変異が多いが、これは近縁種との雑種であろうといわれている。葉は広卵形で互生し、2~3回羽状に深裂する。夏に小さな多数の頭花を円錐(えんすい)花序につける。頭花は淡黄色で、周辺の小花は雌性、中心の小花は両性で、総包の外片は線形、内片は幅広く縁(へり)は薄い膜質となる。痩果(そうか)は倒卵形で長さ1.5ミリメートル、冠毛はなく、かむと苦い。全体に強い芳香があるのは精油を約2%含むためで、ツヨンを主成分とするので駆虫作用もある。全体が苦いのは苦味質のアブシンチンを含むためで、芳香性苦味健胃、強壮、解熱、胆汁分泌促進剤として薬用に供する。アブサン酒をつくるときにも用いられるが、欧米では使用が禁止されていた。その後、条件付きで承認されている。最近ではアニスの実が使われている。これは、本植物を多量に、また継続的に服用するとツヨンの局所刺激作用が強くなるといわれ、危険視されたためであるが、現在ではその影響は疑問視されている。
[長沢元夫 2022年3月23日]