アポロ宇宙船(読み)アポロうちゅうせん(その他表記)Apollo spacecraft

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アポロ宇宙船」の意味・わかりやすい解説

アポロ宇宙船
アポロうちゅうせん
Apollo spacecraft

アメリカ航空宇宙局 (NASA) がアポロ計画のために 20号まで造った宇宙船。司令船,機械船,月着陸船の3部分から成る。司令船は円錐形カプセルで,高さ 3.2m,底部直径 3.9m,重さ 5.9t。内部は3つに分れ,円錐のとがったほうは地球帰還用パラシュートなどが納められている前部機械室で,底のほうが姿勢制御用ロケット燃料や酸化剤,ヘリウムや水タンクなどのある後部機械室である。それらの中間が乗員室となっている。乗員室は3人の宇宙飛行士の居住区で,3分の1気圧の酸素が詰められており,操縦,食事,睡眠などの一切の生活はこの中で行われる。地球に帰還するのはこの司令船だけである。司令船のうしろには円筒形の機械船がついている。直径 3.9m,高さ 7.4m,重さ 25t。その後部に推力 9.3tの主ロケット,外壁には4組の姿勢制御用の十字型ロケットが取付けてある。これらのロケットで月往復のための軌道修正,月を回る軌道への突入,月軌道からの脱出などのための噴射を行う。底部には皿を4枚並べたようなアンテナがついており,宇宙からのテレビ電波の送信などに使われる。機械船内部には水と電力を生産する3個の燃料電池,推進剤のタンク,呼吸用酸素タンク,環境調節装置などがある。機械船は帰路大気圏に再突入する前に司令船から切り離されるが,それまでは司令船と機械船は一体となっているので,両船が結合したままの状態を母船と呼ぶ。月着陸船は2人乗りで,まんなかから上昇部と下降部の2つに分れるようにできている。全長 7m,着陸用の4本の脚を伸ばすと,直径 9.45m,重さ 14.8t。上昇部は2人の宇宙飛行士の居住区であり,下降部には水や酸素タンク,観測器械,生命維持装置の入った背箱などが入っている。離陸のときは,下降部を発射台として残し,上昇部だけで飛立つ。

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百科事典マイペディア 「アポロ宇宙船」の意味・わかりやすい解説

アポロ宇宙船【アポロうちゅうせん】

アポロ計画で用いられた宇宙船。月面着陸ミッションでは司令船と機械船,月着陸船で構成,司令船と機械船が結合したものを母船と呼ぶ。司令船は3人の宇宙飛行士を収容する円錐形のカプセルで,内部には操縦・通信・レーダーコンピューターなどの諸装置や各種生命維持装置がある。外壁は外側がステンレス鋼,内側がアルミの,ともにハニカム構造による2重壁となっており,最外側にはエポキシ樹脂が厚く塗装され,大気圏再突入時の高熱にはそれが気化することによって耐熱の役目を果たす。司令船には姿勢制御装置はあるが,宇宙航行中の推力はすべて機械船のロケットエンジンに依存する。機械船にはロケット燃料,電池,呼吸用の酸素などが積まれている。着陸船は月周回軌道上の母船と月面間の往復に用いられる。
→関連項目宇宙船ソユーズ

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世界大百科事典(旧版)内のアポロ宇宙船の言及

【アポロ計画】より


[計画の推移]
 アポロ計画は1960年7月のNASAの計画発表により本格的に始まり,61年5月,ケネディ大統領が,〈アメリカは1960年代に人類を月に着陸させ無事地球に帰還させることを国家ゴールとして宇宙開発を進める〉という,いわゆる宇宙教書を議会に送ったことで拍車がかかった。アポロ計画のかなめであるアポロ宇宙船および打上げ用のサターンV型ロケットの開発が進められる一方,レンジャー,サーベイヤー,ルナ・オービターによる月面調査,マーキュリー宇宙船,ジェミニ宇宙船による有人飛行実験が行われ,多くのデータの蓄積がなされた。アポロ宇宙船による実験は66年サターンIB型による弾道飛行から始まり,67年11月初のサターンV型ロケットを使った無人のアポロ宇宙船(アポロ4号)の打上げに成功,68年には初の有人のアポロ宇宙船(アポロ7号)を地球周回軌道に乗せることに成功した。…

【アポロ・ソユーズ共同飛行】より

…1972年5月に調印された,宇宙空間平和利用のための協力に関する米ソ覚書に基づき計画されたもので,その主目的は,将来の米ソ宇宙船のドッキングシステムを研究することにあった。75年7月15日,2人乗りのソ連のソユーズ宇宙船が打ち上げられ,その7時間半後,3人の飛行士を乗せたアメリカのアポロ宇宙船が打ち上げられた。両宇宙船は17日地球を周回する軌道上でドッキング,宇宙飛行士の相互移乗のほか両国共同での人工日食,紫外線吸収,材料製造,人体からの微生物採集および菌類繁殖の実験を含め数々の実験を行った。…

※「アポロ宇宙船」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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