翻訳|amyloid
フィルヒョーが人体の種々の組織内に見いだして命名した物質で,主として病理形態学の分野で用いられてきた言葉である。ヨードと反応してデンプン様に青変するため,類デンプンとも呼ばれる。光学顕微鏡下では,エオジン好性の均質無構造なガラス状物質に見え,コンゴ赤染色陽性を示す。電子顕微鏡で見ると,径約10nm,長さ100~500nmの分枝のない細長い繊維の集積で,X線回折法では交差性の折りたたみ構造をなし,またコンゴ赤染色標本を偏光顕微鏡で観察すると緑色偏光複屈折性を示す。アミロイドは,生化学的には糖タンパク質で,デンプンとは関係ない。そのアミノ酸配列の分析によって,タンパク質は免疫グロブリンのL鎖に属する分子量5000~2万5000のタンパク質と,分子量約8500のアミロイドAタンパク質との2種類が主要タンパク質とされているが,これら以外に数種のアミロイドタンパク質の存在が明らかにされている。アミロイドが身体の一部に,あるいは全身の組織に沈着した場合,病理形態学的にアミロイド変性と呼び,これを本態とする疾患をアミロイドージスamyloidosisという。アミロイドージスの原因は不明で,種々の慢性疾患に伴っておこる続発性のもの,先行する疾患なしにおこる原発性のもの,多発性骨髄腫に合併するもの,限局性のもの,遺伝性家族性のもの,老人性のものなどがある。アミロイドは,心臓,消化管,肝臓,腎臓,脾臓,副腎をはじめ,皮膚,筋肉,神経,舌など,全身至るところに沈着しうるが,主として各臓器組織の小血管周囲に沈着し,機能障害を呈するに至る。その臨床症状はきわめて多彩で,診断法としては,直腸生検によって組織内にアミロイドの沈着を確認するのが最も安全かつ診断率の高い方法とされている。確立された治療法はなく,難治性の疾患で,1975年には難病に指定され,厚生省特定疾患調査研究班が発足し,また79年には治療研究対象疾患として取り上げられ,その病態究明に努力がはらわれている。欧米に比べ日本では比較的まれな疾患である。
執筆者:青山 弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
多くの種子中の子葉細胞壁に含まれ,ヨウ素反応で青色を呈するデンプン類似の水溶性多糖(語源:amylose+eidos(resemblance))で,コンゴーレッド染色で,偏光下に重屈折性を示すタンパク質性の繊維の重合体をさす.たとえば,タマリンド種子粘質物の多糖は(1→4)結合したβ-D-グルコピラノースの直鎖に C6 位で1個のα-D-キシロピラノース基と2-O-β-D-ガラクトピラノシル-α-D-キシロピラノース基が結合した構造を有する.そのX線図はセルロースⅡ再生セルロースに類似する.セルロースを硫酸処理すると,一種のアミロイドに部分加水分解されるため,硫酸紙の表面はアミロイドを多く含む.生物・医学分野では,生体に見られる沈着物質の総称で,タンパク質を主成分とし,繊維状のものが多い.アルツハイマー病に関連したものは,アミロイドβタンパク質(Aβ)とよばれる.Aβは,細胞膜貫通型の前駆体から細胞外領域が切り出されて生じるフラグメントで,凝集しやすく,凝集体は強い細胞毒性を発揮する.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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