アンボイナガイ(英語表記)geographer cone
Gastridium geographus

改訂新版 世界大百科事典 「アンボイナガイ」の意味・わかりやすい解説

アンボイナガイ
geographer cone
Gastridium geographus

インドネシアアンボン島にちなんで名付けられた猛毒で知られるイモガイ科の巻貝沖縄では猛毒ヘビのハブにちなんでハブガイという。殻は円筒状で薄く,高さ11.5cm,太さ5.5cmになり,10回くらい巻くが低い。殻表には白色の地に褐色の網目模様と3本の褐色帯がある。その上に灰黄色の薄い殻皮をかぶる。殻口も広くて高く,殻口内は帯紫白色。下端の水管溝は広い。軟体は暗褐色で,はうときは水管溝から水管を長くつき出す。触角の基部に眼がある。餌をとるときは小魚に近づき,口吻(こうふん)をのばして,毒腺に連続したもり状の歯舌を魚に射込む。魚は数秒でけいれんして動けなくなる。それから近づいて大きく口をあけて魚をのみ込む。生きた貝を素手で握るなどして人が刺されると,激痛を感じ,呼吸困難となり数時間で死亡することがある。本州紀伊半島以南,中部~西太平洋,インド洋の潮間帯下の岩礁にすむ。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アンボイナガイ」の意味・わかりやすい解説

アンボイナガイ
あんぼいながい
geographer cone
[学] Gastridium geographum

軟体動物門腹足綱イモガイ科の巻き貝和名は、インドネシアのアンボイナアンボン)島に由来。紀伊半島以南から熱帯西太平洋にかけて広く分布し、サンゴ礁などの浅海にすむ。殻高115ミリメートル、殻径55ミリメートル、殻は円筒形でやや薄質、体層の肩には低いとげ列がある。殻表は蒼白(そうはく)色の地に褐色の細かい網目模様があり、これを地図になぞらえて学名(ラテン名)がついている。そのほか、太い褐色帯が3本ある。生時はこの上に厚い殻皮をかぶっていて、10列ぐらいの殻皮毛列がある。殻口は広く乳白色。歯舌は中空の銛(もり)状で中に毒が装填(そうてん)されていて、これで魚類を刺し殺して食べる。採集した人がこの貝に刺されて死ぬこともあるほど猛毒のため、沖縄ではハブガイという地方名もある。

[奥谷喬司]


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百科事典マイペディア 「アンボイナガイ」の意味・わかりやすい解説

アンボイナガイ

イモガイ科の巻貝。猛毒で知られ沖縄ではハブガイという。殻は円筒状で,高さ11.5cm,幅5.5cmになる。殻表には白色の地に褐色の網目模様と3本の帯がある。紀伊半島以南,中部〜西太平洋,インド洋の潮間帯下の岩礁にすむ。歯舌に刺されると激痛を感じ,数時間で死ぬこともある。

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世界大百科事典(旧版)内のアンボイナガイの言及

【イモガイ(芋貝)】より

…口をのばして広げ,餌を丸のみにする。神経性の毒であるが,魚類(多くは小型のハゼ類)を餌とするアンボイナガイGastridium geographus(イラスト)などはとくに猛毒で,刺されると数秒で動けなくなる。ときに採取時に人が刺されて死ぬことがある。…

※「アンボイナガイ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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