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イリガライ Luce Irigaray

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大辞林 第三版の解説

イリガライ【Luce Irigaray】

1932?~ ) フランスの精神分析医・思想家。女性性と言語の問題に焦点をあてた著作をあらわし、フェミニズムにも影響を与えている。著「ひとつではない女の性」「性的差異のエチカ」など。

出典|三省堂
(C) Sanseido Co.,Ltd. 編者:松村明 編 発行者:株式会社 三省堂 ※ 書籍版『大辞林第三版』の図表・付録は収録させておりません。 ※ それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。

百科事典マイペディアの解説

イリガライ

ベルギー出身,フランスで活動する思想家。〈エクリチュール・フェミニン〉の代表的な理論家・実践者。1974年《検鏡》を出版,ラカンの女性観を批判して反響を呼ぶ。女性のセクシュアリティを強調し,複数的な快楽に基づく女性主体を打ち立てることで男根中心主義の一元的支配を打破しようと試み,フェミニズムレズビアニズムの理論に影響を与えた。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

イリガライ
いりがらい
Luce Irigaray
(1932― )

ベルギー出身のフランスの哲学者、精神分析学者。ルーフェン(ルーバン)大学で哲学、文学を、パリ大学で心理学、言語学、精神分析学を修めた後、フランス国立科学研究センターCNRS:Centre National de la Recherche Scientifique)主任研究員などを務める。エレーヌ・シクスーHlne Cixous(1937― )やジュリア・クリステバと並ぶフレンチ・フェミニズムの代表的理論家、運動家として、アメリカなどのフェミニズム理論に大きな影響を与える。
 彼女の戦略は、西欧の哲学や精神分析が前提としてきたファルス(象徴的男根)中心主義、またそこから導かれる同一性や主体の形而上学を批判し、「女性的なもの」をあえて模倣することによって、また女性のエクリチュールを実践することによって、女性の従属的地位に異議を申し立てると同時に、差異、多数性に基づく新たな倫理の可能性をみいだすことである。
 博士論文「検鏡、もう一人の女性について」Spculum, de l'autre femme(1974)では、プラトンの分析を通じて、「鏡」の論理が西欧思想の起源にあること、男性が鏡像から主体を確立するとされるのに対して、女性はつねに「像がその中で形づくられ成立する母のごときもの」(『ティマイオス』)とされてきたことを立証。鏡としての役割をもちながら、自らの思想をもつことを禁じられてきた女性の表象を再検討することによって、同一性、主体性に基盤を置く西欧の哲学的言説をラディカルに批判した。この戦略は、ニーチェ論『海の恋人』Amante marine(1980)、ハイデッガー論『空気の忘却』L'Oubli de l'air(1983)でも一貫している。
 『ひとつではない女の性』Ce sexe qui n'en est pas un(1977)では、精神分析における男性中心主義が批判される。フロイトは、分析の対象を男性に限定しており、したがって問題はファルスとの関係に局限される。それゆえ女性のセクシュアリティは、小さなペニスとしてのクリトリスか、ペニスの陰画としての膣(ちつ)に局限されることになる。イリガライはこれを否定し、「想像されるよりはるかに多様で、たがいに異なり、複雑で、微妙な」女性の性的快楽の多様性を主張、「ひとつではない」多様で流動的な女性のセクシュアリティを肯定した。またそこから、自己と他者が交換可能な女性同士の関係を規定した。
 『性的差異のエチカ』thique de la diffrence sexuelle(1984)では、男女は相互に還元不可能であるが、だからこそ、そこに新たな倫理の可能性があると論じられる。すなわち、身体的実存あるいは「肉」から出発して、性的差異を、乗り越えがたい差異とみなすのでも、普遍性に回収するのでもなく、そこに発見すべきもの、体験すべきものを絶えず生み出し続ける源泉をみいだす。それは、出口のないこの世界にとっての唯一のチャンスであると同時に、自己自身との関係、他者との関係がどのようにあるべきかという倫理的な問いを課し続けるものでもある。同書は、イリガライの新しい展開として議論をよんだが、その方向性は『差異の文化のために』Je tu nous; pour une culture de la diffrence(1990)や『東洋と西洋のあいだに』Entre Orient et Occident(1999)等に引き継がれることになった。[松葉祥一]
『浜名優美訳『性的差異のエチカ』(1986・産業図書) ▽棚沢直子他訳『ひとつではない女の性』(1987・勁草書房) ▽リュス・イリガライ著、西川直子訳『基本的情念』(1989・日本エディタースクール出版部) ▽浜名優美訳『差異の文化のために――わたし、あなた、わたしたち』(1993・法政大学出版局) ▽Spculum, de l'autre femme(1974, Les ditions de Minuit, Paris) ▽Amante marine; de Friedrich Nietzsche(1980, Les ditions de Minuit, Paris) ▽L'Oubli de l'air; chez Martin Heidegger(1983, Les ditions de Minuit, Paris) ▽Entre Orient et Occident(1999, Grasset, Paris)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ) この辞書の凡例を見る
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