改訂新版 世界大百科事典 「インゲンマメ」の意味・わかりやすい解説
インゲンマメ (隠元豆)
kidney bean
Phaseolus vulgaris L.
マメ科の一年草。サイトウ(菜豆),ゴガツササゲまたはサンドマメともいう。関西地方ではフジマメをインゲンマメと呼ぶことが多い。インゲンマメは隠元が中国から日本にもたらした豆の意味でついた名前であるが,実際に隠元が伝えたのはフジマメであるといわれる。メキシコ中央部からグアテマラ,ホンジュラス一帯が原産地とされる。前5000年ころにはメキシコで栽培され,徐々に中央アメリカや南アメリカに広がった。16世紀にスペインに伝わり,17世紀末までにヨーロッパ全域に普及した。日本には17世紀ころ中国を経て渡来した。
葉は長さ10cmほどのひし形の小葉3枚からなる複葉で,長い柄をもつ。つる性のものは支柱に巻きついて1.5~3mに伸びるが,ツルナシインゲンは高さ30cm内外の矮性(わいせい)である。両者の中間的な品種もある。夏に葉の付け根から花茎が伸び,数個の蝶形花が咲く。花の色は白色,紅色,紫色などがある。花後,さやが伸び10~30cmとなる。豆は腎臓形で長さ1~2cmである。若さやを食べる品種と熟した豆を食べる品種とがある。若さや用はサヤインゲンと呼ばれ,代表品種につる性のケンタッキーワンダーがある。これはドジョウインゲンや成倉(なりくら)の日本名で親しまれている。ツルナシサヤインゲンにはマスターピースなどがある。豆は約60%の炭水化物を含む。中南米,アフリカ,インドなどでは主食に多く利用され,豆の形,色などに多数の変異がある。豆用の品種としては紅または濃赤褐色の金時,昭和金時などが煮豆や甘納豆に使われ,シロインゲンの大手芒(おおてぼう),大福などは白あんや煮豆,甘納豆,きんとんなどに,豆にまだら模様のある虎豆,うずら豆などは煮豆用に使われる。日本での主産地は,豆用が北海道,若さや用は千葉,福島,奈良県などである。
春,霜がなくなったら種子をまく。北海道で5月中旬,関東地方では4月中旬~5月上旬である。つる性の品種は高さが15cmほどになったら土寄せをして支柱を立てる。茎葉が枯れ始めさやの80%が黄変したころに収穫する。連作障害はさほど強くないが輪作にするとよい。
執筆者:星川 清親
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報