フジマメ(読み)ふじまめ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フジマメ」の意味・わかりやすい解説

フジマメ
ふじまめ / 藤豆
[学] Lablab purpurea (L.) Sweet
Dolichos lablab L.

マメ科(APG分類:マメ科)の一年草。別名センゴクマメアジマメ。アジア熱帯、アフリカ地域原産。つるは2メートルほどに伸びる。葉は3小葉からなる複葉秋口葉腋(ようえき)から長い花茎を出し、数節に多くの紫色または白色の花を開く。豆果(とうか)は長さ5センチメートルほど、熟すとしわが寄り、裂開はしない。豆は3~5個入っており、扁平(へんぺい)な黒色で、大きなへそがある。白花種の豆は淡茶色。1654年(承応3)に中国から隠元(いんげん)禅師が導入したという説があり、関西ではインゲンマメの名でよばれるので、真正のインゲンマメと混同されやすい。平安時代にはすでに存在し、あじまめと呼ばれていたという説もある。若莢(さや)を煮物や汁の実とし、未熟な豆も塩ゆでにして食べる。白花のものの豆の粉は腫(は)れ物の塗り薬とし、またその葉汁は腸カタル、吐瀉(としゃ)の飲み薬とする。温暖な気候に適し、おもに関西地方より西で栽培される。

[星川清親 2019年11月20日]


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改訂新版 世界大百科事典 「フジマメ」の意味・わかりやすい解説

フジマメ (藤豆/鵲豆)
hyacinth bean
Lablab purpureus (L.) Sweet(=Dolichos lablab L.)

インド,東南アジアあるいはアフリカ原産といわれ,今日では世界の熱帯から暖帯食用のために広く栽培されているマメ科のつる性一年草。センゴクマメ(千石豆),アジマメ(味豆)ともいう。全体はインゲンマメに似ている。葉は3小葉をつける。7~10月に葉腋(ようえき)から長い花穂を伸ばし,多数の蝶形花をつける。花は紅紫色または白色で,長さ約2cm,フジの花に形が似ており,和名となった。果実は扁平で広三日月形,長さ5~7cm,先端に太い花柱が残っている。種子は3~5個,黒紫色または白色。隠元禅師が日本に持ってきた豆ということで,本種をインゲンマメ(隠元豆)と呼ぶこともあるというが,本当のインゲンマメは別な植物である。種子および若い果実を食用とし,白色の種子の粉をはれ物にぬり,葉の汁を吐瀉(としや)止めの薬用にするという。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フジマメ」の意味・わかりやすい解説

フジマメ(藤豆)
フジマメ
Dolichos lablab(Lablab niger); hyacinth bean

マメ科の多年草で,旧大陸の熱帯地方が原産といわれる。広く各地で食用に栽培され,一年草として扱われることが多い。茎はつる状で,他物にからみついて上に登る。葉は互生し,長柄のある3出複葉で,各小葉は径 10cmほどの卵円形である。7~9月に,総状花序に紫色または白色の蝶形花を2~4個ずつ節につける。この花序がフジに似て美しいところからこの和名があるが,関西地方ではこの種類をインゲンマメと呼ぶこともある。莢は扁平,鎌形で先はとがり長さ 6cmぐらいで,中に数個の種子 (マメ) を生じる。食用にされるが,特に白花品種の種子は扁豆といい,薬用になる。

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百科事典マイペディア 「フジマメ」の意味・わかりやすい解説

フジマメ

熱帯アジア・アフリカ原産といわれるマメ科の一年草。茎はつる性で葉は3小葉からなる複葉。葉腋から花穂を出し,紅紫色または白色の蝶(ちょう)形花を多数つける。豆果は鎌形で幅2cm,長さは6cm以上,中に数個の豆を含む。若い豆果を煮付,汁の実などにし,豆を煮豆として食べる。関西ではこれをインゲンマメと呼ぶことがある。

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世界大百科事典(旧版)内のフジマメの言及

【豆】より

…南アメリカ原産のインゲンマメはアフリカやインドでも主食的に利用される重要な豆類であるし,ボリビア原産のラッカセイは,その高い脂肪含有量のため広く食用にされ,どちらも世界の各地で栽培されている。その他にも〈もやし〉に多用されるインド原産のリョクトウ,若い豆果が野菜とされるアフリカ原産のササゲ類(ササゲ,ヤッコササゲ,ジュウロクササゲなど)や,熱帯アジア原産のナタマメやシカクマメPsophocarpus tetragonolobus(英名fourangled bean),それに加えて中央アメリカや南アメリカ原産のライマメPhaseolus lunatus(英名lima bean),ベニバナインゲン,インド原産のヒヨコマメフジマメ,アフリカ原産のキマメなど,多数の種が栽植され,利用されている。これら熱帯系の豆類のうちのいくつかは,温帯圏での夏作作物となっており,日本でも栽培されている。…

※「フジマメ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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