ウリミバエ(読み)うりみばえ(英語表記)melon fly

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウリミバエ」の意味・わかりやすい解説

ウリミバエ
うりみばえ / 瓜実蠅
melon fly
[学] Dacus (Zeugodacus) cucurbitae

昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目ミバエ科に属する昆虫。体長8~9ミリメートル、翅長7ミリメートル内外で、体は黄褐色ないし黄赤褐色。胸部背面の小字形の3縦条、両肩瘤(けんりゅう)部、小楯板(しょうじゅんばん)はいずれも淡黄色。はねの前縁は第4、第5径脈(けいみゃく)まで褐色で、翅頂部の大きな濃褐色の円紋に接続する。径中と中肘(ちゅうちゅう)両横脈上にも、それぞれ濃褐色紋が顕著である。腹部の基部は褐色で、第3節よりも後方にわたってT字形の黒褐色紋がある。幼虫は各種のウリ類のほか、80種以上の生果実を加害する国際的な大害虫である。最初に新種として記載されたのはハワイであるが、原産地は東洋熱帯と考えられ、東洋および太平洋の熱帯、亜熱帯地域に広く分布する。1919年(大正8)には沖縄県八重山(やえやま)諸島に生息が知られていたが、1929年(昭和4)に宮古(みやこ)諸島に侵入定着した。また、同県の久米島(くめじま)へはおそらく第二次世界大戦中の侵入と考えられる。1970年(昭和45)に確認されて以後、年を追って北上し、1979年には鹿児島県屋久島(やくしま)および種子島(たねがしま)にまで侵入したが、定着はしなかった。その後沖縄県では大規模な不妊虫放飼法(ふにんちゅうほうしほう)による対策事業が行われて奏功し、1993年(平成5)4月15日根絶確認が宣言された。しかし、再侵入に対する警戒は続行されている。本種の雄成虫は、洋菓子用の芳香物質でもあるキュールアcue-lureに、きわめて効果的に誘引されるので、防除発生予察に利用されている。

[伊藤修四郎]

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改訂新版 世界大百科事典 「ウリミバエ」の意味・わかりやすい解説

ウリミバエ
melon fly
Zeugodacus cucurbitae

双翅目ミバエ科の昆虫。本種は,東南アジアの熱帯,亜熱帯のほか,ニューギニアやハワイ諸島に広く分布するウリの害虫で,加害する植物は,ウリ類(キュウリニガウリ,スイカ,カボチャ)のほか,トマト,ピーマンや野生植物を含めて50種以上にも達する。日本では1920年に八重山列島の石垣島で発見されて以来北上して分布を拡大し,現在では吐噶喇(とから)列島にまで広がっている。成虫は体長6.5~8mm,体は黄褐色ないし赤褐色で,胸部の肩瘤(けんりゆう)と中胸背面の小字形紋は白色,翅の先端と中央部やや下に褐色の斑紋がある。卵は前記植物の生果実に産みつけられる。幼虫は黄色,うじむし形で果実を食べて成長する。幼虫は,体をまるめてピョンと跳びはねる習性がある。南西諸島からは,このハエのために本土にウリ類,トマトなどの出荷が禁止されており,経済的に大きな損失を与えている。沖縄県農業試験場では,このハエ防除のために,γ線を照射して不妊にしたハエを放す不妊虫放飼法(不妊防除)を実施し,1993年には沖縄全域で根絶された。近縁種にはカボチャミバエがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウリミバエ」の意味・わかりやすい解説

ウリミバエ

ミバエ」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のウリミバエの言及

【不妊防除】より

…1年間,この操作をくり返し行うことによって,同地区のラセンウジバエによる被害が認められなくなり,同害虫が絶滅したことが確認された。日本では沖縄県のウリミバエの防除に,このような方法が75年末とり入れられている。その結果,久米島に不妊ウリミバエを数年間放飼することによって,同島のウリ類の被害をほとんどなくすことに成功した。…

※「ウリミバエ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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