改訂新版 世界大百科事典 「ウンピョウ」の意味・わかりやすい解説
ウンピョウ (雲豹)
clouded leopard
Neofelis nebulosa
ヒョウに似ているが小さく,尾が長い食肉目ネコ科の哺乳類。タカサゴヒョウ,タイワントラともいう。ネパール,シッキムから東は中国南部,海南島,台湾まで,南はスマトラ島,ボルネオ島まで分布。体長62~107cm,尾長61~91cm,体重16~23kg。体はがんじょうで胴が長く,四肢が短い。頭は幅が狭く,上あごの犬歯が現生ネコ類中もっとも長い。体には灰褐色~黄褐色の地に,黒褐色の斑点と縞があり,体側では6~8個の大きな暗色の斑紋を形成し,それらの前縁と後縁は黒色で縁取られる。平地から標高2000mまでの森林にすみ,主として早朝と夕方に活動する。木登りが巧みで,枝から片脚だけでぶら下がり,頭を下にして幹をかけおりることができる。樹上でサル,リス,鳥などを捕食するほか,木の上から下を通るシカやイノシシの背にとびおりて殺す。また地上でも狩りをし,ヤギ,スイギュウの子,ヤマアラシなどを捕食するが,人を襲った例は知られていない。妊娠期間約90日,1腹2~4子を生む。寿命は飼育下で17年の例が知られる。きばはボルネオ原住民が耳飾とし,毛皮は各地で敷物にされる。生息数は分布の全域で減少しつつあり,国際自然保護連合(IUCN)では絶滅に瀕(ひん)した種に指定しているが,台湾ではすでに絶滅の可能性が強い。
執筆者:今泉 吉典
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報