エステス(Richard Estes)(読み)えすてす(英語表記)Richard Estes

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

エステス(Richard Estes)
えすてす
Richard Estes
(1936― )

アメリカの画家。1970年代初頭に盛んとなったスーパーリアリズム(別名ハイパーリアリズムフォト・リアリズム)を代表する画家。イリノイ州エバンストンに生まれる。シカゴ美術研究所に学び、1968年に最初の個展ニューヨークで開いた。スーパーリアリズムという名称が示すように、いわゆる写実絵画とは異なり、プロジェクターで投影された写真を用いて、風景や事物を映像のもつ精密度で描くことを特徴とする。好んで都会街路、広告看板、ポスターマネキンなど現代的な光景主題とする点ではポップ・アートと共通し、明晰(めいせき)で冷徹な機械の目への信頼はミニマル・アートの没個性的な作風と共通しているといえよう。その作品はガラス窓や自動車のボディーなどの表面への光やものの反映を巧みに取り入れ、クールで乾いた叙情性を漂わせる。盛期から20年近くが経過した1990年(平成2)に日本初の個展が東京・新宿で開催された。

[石崎浩一郎]

『森下泰輔著「リチャード・エステスと写真以降」(月刊ギャラリー編集部編『美術論』第1巻所収・2001・ギャラリーステーション)』『Louis K. MeiselRichard Estes ; the complete paintings, 1966-1985(1986, Abrams, New York)』『John ArthurRichard Estes ; paintings & prints(1993, Pomegranate Artbooks, San Francisco)』

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