1970年前後からニューヨークを中心に進められた写実主義の傾向。極端に克明な描写からこの名が与えられ、またハイパーリアリズムhyperrealismともよばれる。ただし多くの場合、その極度な描写は直接実物に向けられるのではなくて、実物をそっくり写した写真をもう一度克明に描写するという手順を踏んでいる。もとより写真は没個性的に対象を写し取るのであるが、さらにそれを没個性的に再現することによって得られる透徹したイメージ、あるいは非情な映像がこの傾向の大きな特徴である。一方でフォト・リアリズムphoto realismとよばれるのはこのためである。カメラの視覚がとらえる映像は実物とは別物の、一種の虚構なのだが、すでに日常はこの虚構に包囲され、この種の新しい視覚を一面で現実とみなすに至っている。スーパーリアリズムはこの新しい視覚を作品化したものである。
作家としては、都市風景をカメラ・アイさながらに徹底して均質にとらえるリチャード・エステス、正面からの肖像写真を拡大して描き続けるチャック・クローズChuck Close(1940―2021)らがあげられる。スーパーリアリズムのなかには、等身大の人物像をつくり、文字どおり日常を再現するドゥエイン・ハンソン、ジョン・デ・アンドレアJohn De Andrea(1941― )らの彫刻作品も含められる。
[高見堅志郎]
極端な写実的描写によって日常卑近の光景を,ストップ・モーションのように表現しようとする絵画および彫刻のこと。〈超写実主義〉の意。ハイパーリアリズムHyperrealism,写真的写実主義Photorealismとも呼ばれる。1960年代末から70年代前半にかけて,おもにアメリカとイギリスで制作された。主要作家はクローズChuck Close(1940- ),モーリーMalcolm Morley(1931- ),ゴーイングズRalph Goings(1928- ),デービスJohn Davies(1946- ),デ・アンドレアJohn de Andrea(1941- ),ハンソンDuane Hanson(1925-96)ら。スーパーリアリズムは,細密描写,魔術的リアリズムなど時代を問わず存在してきた極端な写実主義の一つとみなすこともできる。しかし,これは決して自然主義ではなく,極度の写実表現を意図的に採用したもので,逆説的に写実主義の虚構性を露呈させている。
執筆者:千葉 成夫
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