ミニマル・アート(読み)ミニマルアート

百科事典マイペディア 「ミニマル・アート」の意味・わかりやすい解説

ミニマル・アート

1965年に英国の美学者リチャード・ウォルハイムが,デュシャンマレービチラインハートらを論じたエッセーのタイトルから転用された語。あえて訳せば〈極小・最小の芸術〉という意味になるこの用語は,1960年代に米国で展開した美術の動きを指すようになった。制作者の手の痕跡をできるだけ排除し,物質としての素材を単純な形態と簡潔なシステムとして呈示する一群作品である。ステラの1958年に始まる〈ブラック・ペインティング〉のシリーズやジャッドの箱様のオブジェを並べた作品,モリスの単純で単一な幾何学的形態,カール・アンドレ〔1935-〕のレンガや鉄板のユニットを配置した作品などが挙げられる。没個性的な,極限まで作品の物質性を切り詰めた手法は,美術を美術として成立させるものは何かという問いかけでもある。その問いを,ポップアートネオ・ダダのように社会と芸術との関係におくのではなく,ものと視覚の関係に収斂させる。自らは作品を制作せずすべて他者の手を通して制作したソル・ルウィット〔1928-2007〕のように,芸術作品のものとしての側面よりも創造的アイデアを重視する作家も現れ,コンセプチュアル・アート誕生の布石となった。
→関連項目アルバースアンダーソン桑山忠明ケリーシュナーベルスーパー・リアリズムセラ辰野登恵子プライマリー・ストラクチャーズミニマル・ミュージック山田正亮

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