改訂新版 世界大百科事典 「オジブワ族」の意味・わかりやすい解説
オジブワ族 (オジブワぞく)
Ojibwa
北アメリカ五大湖地方西部のスペリオル湖周辺から大平原地方北部に居住するインディアン。チポワ族Chippewaとも呼ばれる。言語はアルゴンキン語族に属する。白人との毛皮交易の影響を最も強く受けた部族の例である。もと五大湖地方中部に居住し,狩猟,漁労活動に従事していた。冬期にはかなりの規模のバンドを形成していたが,夏には使用権をもつ狩猟地に分散していた。首長は存在していたものの,意思決定には年長者が重要な役割を果たしていた。父系氏族制が外婚単位として機能していたが,他の面では双系的傾向がみられた。フランス人植民地が北アメリカ東部に成立し,毛皮交易が盛んになるにつれ,オジブワ族は毛皮獣を求めて西方に移動した。毛皮交易はインディアンを労働力とし,白人商人との密接な関係の成立を不可避にした。バンドの長は商人と有利な取引をし,交易品をもたらす仲介者になり,強い地位に変化した。社会の父系的傾向と結びついて,この地位が父系出自原理で相続されるようになった。また,スペリオル湖周辺に生育するワイルドライスの利用は比較的安定した食料供給源になるとともに,ワイルドライスの生育地の分配をめぐってバンドの長の力をさらに強固にすることになった。大平原地方でダコタ族などと接触し,オジブワ族の文化は大平原的要素を吸収し,内容的に豊富になった。
執筆者:小谷 凱宣
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報