オポッサム(英語表記)opossum

翻訳|opossum

精選版 日本国語大辞典 「オポッサム」の意味・読み・例文・類語

オポッサム

〘名〙 (opossum)
① 有袋類オポッサム科の哺乳類の総称。中南米に一一属七七種が知られ、そのうちキタオポッサムだけが北米まで分布する。体長七~五〇センチメートルで、形態も生態もさまざま。下腹部に浅い育児嚢があり、子どもが未熟なうちはそこで育て、ある程度まで育つと背中に乗せて移動する。多くの種は尾が発達し、木の枝などを尾でつかむことができる。別名コモリネズミフクロネズミ
② キタオポッサムのこと。南米北部から北米に分布し、林に生息するが公園など人家付近にもよく姿を見せる。体長五〇センチメートル前後で、オポッサム科の最大種。おもに地上で生活するが、木にもよくのぼる。日中は樹洞などにひそみ、夜に活動する。雑食で、ときにニワトリなどを襲うこともある。子どもは最初の七〇日ほどは育児嚢で乳を飲んで育ち、育児嚢を出たあとも一か月ほどは固形物だけでなく乳も飲む。育児嚢を出た子どもは、母親の背中に乗っていることが多い。擬死、すなわち死んだふりをする習性がある。

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デジタル大辞泉 「オポッサム」の意味・読み・例文・類語

オポッサム(opossum)

有袋ゆうたい目オポッサム科の哺乳類の総称。ネズミに似た外形で、キタオポッサムは、体長40~65センチ、尾長25~50センチ。体の上面は灰色の霜降り雑食性夜行性木登りがうまい。北アメリカからアルゼンチンまで分布。ミナミオポッサムは南アメリカに分布。ふくろねずみ。

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改訂新版 世界大百科事典 「オポッサム」の意味・わかりやすい解説

オポッサム
opossum

別名コモリネズミ,フクロネズミ。長い尾をもつネズミに似た姿のオポッサム科Didelphidaeに属する有袋類の総称。カナダ南東部からアメリカ合衆国東部,メキシコを経て南アメリカのアルゼンチンまで11属約75種が分布する。北アメリカにすむ唯一の有袋類である。

 大きさはネズミ大からネコ大の種まである。長い尾は多くの種で根もと近く以外は毛がなく,木の枝などに巻きつき,樹上での動きを助ける。四肢は短く,5指を有し,後足の親指にはつめがなく対向性で,枝を握るのに適する。口吻(こうふん)は長く突出する。歯は鋭く,全部で50本で門歯の数が多い。

 開けた平原と高地を除くさまざまな場所にすみ,おもに樹上または地上生,まれに半水生。単独で生活し,夜間活動して,日中は樹洞などで休む。雑食の種が多いが,食肉性や食虫性の種もある。繁殖率は高いが,ボブキャットオセロットなど多くの天敵に捕食される。

 北アメリカからアルゼンチン北部まで分布するキタオポッサムDidelphis virginianaは体長50cmに達し,林ややぶのほか,公園でも見られる。単にオポッサムといった場合,本種を指すことがしばしばである。地上生だが,木にも巧みに登る。日中は岩の割れ目,樹洞などに潜み,暗くなってから活動して,果実,昆虫,小動物などを食べ,ときにニワトリを襲う。雌の育児囊はよく発達しており,13個の乳頭をもつ。13日の短い妊娠期間の後8~18子を生む。子はすぐに母親の腹をはい登って育児囊に入り,乳頭に吸いつくが,乳頭につけなかった子は死ぬ。約70日間囊内にとどまり,授乳を受けた後,さらに1ヵ月間母親の体の上を動き回り,乳と固形物の両方をとる。母親は子を背中に乗せたまま動くことがある。驚いたときには仮死状態に陥り,〈死んだふり〉をする。

 メキシコからアルゼンチンまでの森林やパンパに生息するマウスオポッサムMarmosaは体長9~19cm,尾長9~28cm。樹上生で,バナナ農園でよく見られる。単独性で,夜間木の枝やつるに尾を巻きつけながら動き回り,昆虫,果実,小動物を食べる。尾で枝にぶら下がり,両手で果実をもって食べることもある。雌は育児囊をもたず,子は9~19個の乳頭にしがみついて育つ。

 メキシコからアルゼンチンまでの川や湖にすむミズオポッサムChironectes minimusは,水中生活に適応した唯一の有袋類でもある。体は流線型で,毛は密生し,後足には水かきをもつ。育児囊は周囲の括約筋の働きで閉じることができ,母親が子を中に入れたまま水中で活動しても水が入らない。完全な食肉性で,日中は岸に掘った穴の奥の巣室で休み,夜間巧みに泳いだり,水中に潜って甲殻類,貝類,魚類を食べる。1産5~6子。体長27~33cm,尾長36~40cm。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オポッサム」の意味・わかりやすい解説

オポッサム
おぽっさむ
opossum

哺乳(ほにゅう)綱有袋目オポッサム科に属する動物の総称。同科Didelphidaeの仲間は、北アメリカ、中央アメリカ、南アメリカに広く分布する。樹上生、地上生、まれに水生の、虫食または雑食に適した有袋類である。口先は長くとがっている。大きさは種により異なり、10~50センチメートルとさまざまである。前足、後ろ足ともに長さはほぼ同じで、おのおのに5本の指がある。後ろ足の第1指は大きく、つめを欠き、他の指に対向する。尾は普通長く、先端近くは裸出し、物に巻き付けることができる。育児嚢(のう)の形態はさまざまで、よく発達しているもの(キタオポッサム、ヨツメオポッサム)、発達が悪く側壁があるだけのもの(ウーリーオポッサム)、さらには育児嚢のまったくないもの(マウスオポッサム、イタチオポッサム)などがある。乳頭の数も少ないもので4個、多いもので27個と幅がある。妊娠期間は有袋類に特有の短いもので、約2週間である。

 学者によって分類方法が異なるが、約80種に分類され、代表的なものはキタオポッサムDidelphis marsupialisである。同種は北アメリカの大部分からアルゼンチン北部までに分布する。頭胴長33~50センチメートル、尾長25~50センチメートル。尾はほとんど裸出し、物に巻き付けることができる。体毛は長く、黒、褐色、白などで、体上面は霜降り状になっている。雌には育児嚢があり、中には12~13個の乳頭がある。おもに地上生であるが、木登りも巧みである。夜行性で、昼間は木の洞や岩のすきまなどに潜む。単独で生活し、雑食性で、昆虫、小鳥の卵、果実、小哺乳類などを食べる。妊娠期間は12~13日で、8~18頭、ときには20頭の子を産む。乳頭の数より多い子を産んだ場合、乳頭に吸い付けなかった子は死亡する。新生子の体重はわずかに0.15グラムぐらいである。近似種のミナミオポッサムD. paraguayensisは南アメリカに分布する。

[中里竜二]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オポッサム」の意味・わかりやすい解説

オポッサム
Didelphidae; opossum

有袋目オポッサム科の動物の総称。フクロネズミともいう。 60種以上から成る。体長は 14~100cm。尾は体長より長いもの,短いものなどさまざまで,先端近くには毛がなく,物に多少巻きつけることができる。手足とも5本の指があり,足の第1指には爪がなく,他の指と向き合っている。育児嚢は,マウスオポッサム属 Marmosaのようにまったくないもの,オポッサム属 Didelphisのようによく発達するもの,ウーリーオポッサム属 Caluromysのように側壁しかないものなど,さまざまである。乳頭数も種類によって異なり,少いもので4個,多いものでは 27個ほどもある。多くは樹上で生活するが,ジネズミオポッサム属 Monodelphisのように地上にすむもの,ミズオポッサム属 Chironectesのように淡水にすむものもある。

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百科事典マイペディア 「オポッサム」の意味・わかりやすい解説

オポッサム

フクロネズミとも。有袋目オポッサム科の哺乳(ほにゅう)類の総称。形はドブネズミに似る。体長はハレギマウスオポッサムの6.8cmから,33〜55cmのキタオポッサムまで。尾は長く,4.2〜54cmまで。南〜北アメリカの各地にすむ。夜行性で果実,昆虫,鳥,卵などを食べ,ときにニワトリも襲う。地上生活をするが,尾を使い巧みに木に登る。1腹3〜56子。毛皮を目的に狩られてきた。
→関連項目有袋類

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世界大百科事典(旧版)内のオポッサムの言及

【育児囊】より

…子の排泄物は母親が育児囊を清掃する折になめとられる。育児囊にはカンガルーやオポッサムのように前方に口が開いたもの,コアラやバンディクートのように後方へ開いたもの,単なる皮膚のひだ様でしかないものなどさまざまある。また有袋類なのに育児囊のまったくないケノレステス(南米産)などもいる。…

【タヌキ(狸)】より


[タヌキ寝入り]
 タヌキは猟師の撃った銃の音などに激しく驚かされると失神し,しばらく後に正気に戻り逃げ出すと昔からいわれ,これを〈タヌキ寝入り〉と称してきた。しかし,オポッサム(有袋類)の同様な行動は警戒行動であり,脳は完全に目覚めた状態にあることが判明し,タヌキの場合も失神でなく,本能的にある種の刺激に応じて死んだふりをするのではないかと考えられるようになってきている。 タヌキの毛皮は良質で,襟巻やコートにされる。…

※「オポッサム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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