カトリックで公教要理、プロテスタントで教理問答などといわれるキリスト教の信徒教育の教材。聖なる境界での問答の事例は、古代の宗教と神話(オイディプスとスフィンクス、イシュタルと冥界(めいかい)の門番)でみられる。キリスト教では、ユダヤ教の問答形式による教育方法を継承して、入信以前の者を対象に洗礼式前の準備として、教理教育が早くから考案され、西方教会では(諸)信条、主の祈り、十戒の解説を中心にした教理の集約的表現に努力した。とくに宗教改革の時代には、カテキズムは、個人の自覚的な入信を目標とするキリスト教教育の有効な教材となった。また、各教派の信徒の信仰訓練の神学的基準としていまも有効に機能している。カテキズムということばはギリシア語の「カテェケイン」katēcheōに由来し、問答の意味はなく、「響く」「聞かせる」を意味する。教理の中心はキリストの福音(ふくいん)で、啓示された超越的真理である。したがって、その教理は「人の心に思い浮かびもしなかったこと」(「コリント書Ⅰ」2章9節)を問答形式の手引書を用いて、響かせ、聞かせ、教える行為を教会の使命と考える啓示宗教の伝道的性格に強く支えられる。代表的カテキズムとしては、大・小教理問答(1529)、ハイデルベルク教理問答(1563)、ウェストミンスター教理問答(1647)、カトリック要理(1960)などがある。
[川又志朗]
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…キリスト教信仰教育のための書物。ギリシア語katēchein(〈口頭で教える〉の意)に由来し,英語ではカテキズムcatechismという。キリスト教会はその歴史の最初の時期から受洗志願者や教会全体の教育のために教理を要約し,生活の指標を与える素材を選んで,その努力をつづけた(《ディダケー》など)。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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