花が大きくて美しいものが多く,〈ランの女王〉といわれるラン科植物。カトレア属Cattleyaは熱帯アメリカに原種が約40種分布し,樹木に着生して生活する。しかし,これら原種の栽培はほとんどなく,改良された園芸品種や属間交配種が切花や鉢花として利用されている。1818年ブラジルで発見され,24年イギリスで最初の花が開き,時の園芸家であったカトリーW.Cattleyにちなんで学名がつけられた。日本へは明治年間にイギリスより渡来している。短い匍匐(ほふく)茎と紡錘状の偽球茎をもち,その頂部に1枚もしくは2枚の厚い革質の葉をひろげる。直径10cm以上,ときには20cmをこえる花は,茎の頂部に直立する花茎に,通常は2~3輪咲き,3週間は観賞できる。花茎に総状に10~20輪の花をつける種もある。花色はピンク,赤,黄から白,淡紫,緑,橙と多彩である。
種間交配によりチョコレートドロップChocolate Drop,ボウベルスBow Bells,ボブベッツBob Bettsなどの園芸品種がある。また近縁属との交配によって多くの属間雑種が作出され,園芸品種としても重要なものがある。それらはレリオカトレアLealiocattleya(レリア属Lealiaと),ブラッソカトレアBrassocattleya(ブラサボラ属Brassavolaと),ソフロカトレアSophrocattleya(ソフロニティス属Sophronitisと),さらにポティナラPotinara(レリア,ブラサボラ,ソフロニティスとの4属間交雑)などである。最近ではエピデンドルム属Epidendrumやブロートニア属Broughtonia,ディアクリウム属Diacriumとの間にも属間交配が行われ,Epicattleya,Broughtocattleya,Diacattleyaなどが生まれている。これらも通常カトレア類と呼ばれる。
越冬に12℃以上あれば冬でも開花するが,7~8℃のときは株が越冬する程度で春からの生長はおくれる。生育期は春から秋までで,この間は戸外に出して風にあて,寒冷紗下くらいの日光にあて,肥培する。花は新しく出た茎の上にのみつき,古い茎にはつかない。繁殖は株分けで,2~3年ごとに春に行う。
執筆者:江尻 光一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ラン科(APG分類:ラン科)の1属名。中央アメリカ、南アメリカ原産。自生地では樹木の枝に着生し、気根を出す好気性の着生の洋ラン。洋ランのなかではもっとも華麗である。属名は、イギリスの植物愛好家のカトレイWilliam Cattleyの名にちなむ。園芸上ではカトレア、レリア、ブラサボラ、ソフロニティスの4属と、この相互間の雑種のブラソカトレア、レリオカトレア、ブラソレリオカトレア、ソフロカトレア、ソフロレリオカトレアと、4属が交配されているポチナラなどをカトレアと総称していたが、最近はカトレア属とエピデンドラム属との間にエピカトレアが、ブロートニア属との間にカトレトニアが、ディアクリウム属との間にディアカトレアなどの人工新属が生まれ、これらを含めてカトレア類とも総称している。花色は白、桃、紅(べに)、朱赤、紫紅(しこう)、橙黄(とうこう)、黄色などと多様で、普通は径15~18センチメートルの大輪花を3個以上つけるものもある。春咲きから冬咲き種まであり、二季咲き種も含めると一年中花がみられる。栽培には冬に最低10℃を保つ場所が必要で、生育期は春から初秋まで。この間寒冷紗(かんれいしゃ)下に株を置き、水やりと施肥をよくし、春に出た芽を大きくすると、初秋ころから花芽がみえだす。植込み材料にはミズゴケ、軽石、バークなどを単用するが、ミズゴケ以外のものの場合は肥料をすこし増やさないと花芽は出にくい。
繁殖は株分け、実生(みしょう)のほか成長点培養(メリクロン)によってもできるが、一般には株分けによる。株分けは3、4年ごとの春または秋に、大株になったものを2、3芽ずつに分けて行う。実生は新品種をつくるとき以外は行わない。
[江尻光一 2019年5月21日]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加