日本大百科全書(ニッポニカ) 「カニッツァーロ反応」の意味・わかりやすい解説
カニッツァーロ反応
かにっつぁーろはんのう
Cannizzaro reaction
アルデヒド2分子がアルカリの作用により、1分子は対応するカルボン酸に酸化され、もう1分子は対応するアルコールに還元される有機化学反応。ベンズアルデヒドにアルカリを作用させると安息香酸を生ずることは1832年ドイツのリービヒとウェーラーによりみいだされていたが、1853年イタリアのカニッツァーロは安息香酸とともにベンジルアルコールが得られることを示したので彼の名でよばれるようになった( )。
重水中で反応させても生成アルコールのメチレンには重水素が入らないから、アルデヒド2分子の間で、一方のアルデヒド分子が酸化されてカルボン酸になり同時に他方のアルデヒド分子が還元されてアルコールになる不均化反応がおこっている。アルデヒドのα(アルファ)位置に水素があるとアルドール縮合のほうが優先するので、この反応はα-水素をもたない芳香族アルデヒドによく用いられる。2種類のアルデヒド間でもおこる(交差カニッツァーロ反応)が、生成する混合物の分離が困難になるので一方がホルムアルデヒドのときにだけ利用される。有機合成に有用な反応である。
[湯川泰秀・廣田 穰 2016年2月17日]