日本大百科全書(ニッポニカ) 「ベンズアルデヒド」の意味・わかりやすい解説
ベンズアルデヒド
べんずあるでひど
benzaldehyde
代表的な芳香族アルデヒドで、苦扁桃油(くへんとうゆ)ともいう。モモやアンズの芯(しん)の精油の主成分として植物界に分布し、ネロリ油など一部の精油中に含まれている。
トルエンを接触的に酸化するか、トルエンを塩素化して塩化ベンジリデンにしたのちに加水分解する方法により製造されている。アーモンドに似た特有な芳香をもつ無色の液体で、水にはほとんど溶けないが、エタノール(エチルアルコール)、エーテルなどの有機溶媒によく溶ける。酸化されやすく、空気中で徐々に安息香酸になる。水酸化アルカリを作用させると、酸化と還元が同時におこり、安息香酸塩とベンジルアルコールになる。この反応は、発見者にちなんでカニッツァーロ反応とよばれている( )。
また、シアン化カリウムの存在下で加熱すると、2分子が縮合してベンゾインC6H5CH(OH)COC6H5になる。この反応をベンゾイン縮合という。
ベンズアルデヒドは安価な香料として、せっけんなどに用いられる。
[廣田 穰 2016年2月17日]