カノコガ(英語表記)Amata fortunei

改訂新版 世界大百科事典 「カノコガ」の意味・わかりやすい解説

カノコガ
Amata fortunei

鱗翅目カノコガ科の1種。幼虫タンポポの葉を食べる黒色毛虫で,成虫は開張3cm内外。翅が黒く,前翅に6個の透明紋があり,後翅の半分くらいが透明。体は青色光沢があり,二つの黄色帯がある。全国的に分布し,成虫は草地を低く飛ぶ昼飛性のガ。年2回発生し,幼虫で越冬する。日本には,この科は本種のほかキハダカノコツマキカノコの2種を産する。

 カノコガ科Ctenuchidaeは熱帯に属種が多く,温帯から寒帯にはごく限られた種しか分布していない。成虫はすべて昼間活動性で,同じ地域にすむハチベニボタル科の一部と非常によく似ていて,擬態しているものと考えられている。このような例はとくに熱帯アメリカに多く,一部のカノコガ類ははでな色彩をしていて,同一地域のヒトリガ科とよく似ている。カノコガ類の一部は,食虫性の鳥や獣類のきらう体液をもっているものと推定されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カノコガ」の意味・わかりやすい解説

カノコガ
かのこが / 鹿子蛾

昆虫綱鱗翅(りんし)目カノコガ科Ctenuchidaeの総称、またはそのなかの1種。この科の種は、はねの開張30~40ミリメートル内外の小形のガで、体翅とも細長く、ハチにやや似ており、昼間活動する。前後翅とも透明の紋をもつ種が多い。ほとんど全世界に分布しているが、熱帯地方に多く、ことに南アメリカには種数が多い。ハチやヒトリガの一部と紛らわしいほど似ているものが少なくないが、これらの昆虫と擬態関係をもつものと推定されている。世界に約3000種が知られているが、日本にはわずか3種しか分布していない。そのうち2種が本土に、1種が沖縄の八重山(やえやま)列島に産する。

 和名カノコガAmata fortuneiは、日本各地に分布するもっとも普通の種。はねの開張30~38ミリメートルで、黒褐色の地に透明な白斑(はくはん)を散在する。年2回、6~8月に出現し草原に多い。幼虫は毛虫状でタンポポの葉を食べる。

[井上 寛]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カノコガ」の意味・わかりやすい解説

カノコガ
Amata fortunei

鱗翅目カノコガ科。前翅長 14~21mm。前翅は細長く,黒色地に6個の透明斑がある。後翅は小さく,黒色で,基部は広く透明。体も黒色で,腹部に黄色帯が2本ある。成虫は日中活動性で,6月と8月下旬~9月に発生する。幼虫は雑食性。北海道,本州,四国,九州,朝鮮に産する。近縁のキハダカノコ A. germanaは本種に似るが,腹部全体が橙黄色で,7~9月に出現する。幼虫はハコネウツギの花やつぼみ,その他キク科の植物などを食べるといわれる。本州,四国,九州,台湾,朝鮮,アムール川流域などに分布する。なおカノコガ科 Amatidaeは世界に約 2000種が知られているが,そのほとんどが南アメリカ産で,日本産は上述の2種のみである。

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百科事典マイペディア 「カノコガ」の意味・わかりやすい解説

カノコガ

鱗翅(りんし)目カノコガ科の1種。開張35mm内外,黒地に半透明紋があり,腹部に2本の黄帯がある。日本全土,朝鮮,中国に分布。幼虫はシロツメクサ,スギナなどを食べ,成虫は晩春と夏に,寒地では年1回夏に現れる。幼虫で越冬。

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