カルテ開示(読み)カルテかいじ

百科事典マイペディア 「カルテ開示」の意味・わかりやすい解説

カルテ開示【カルテかいじ】

患者が自分の病気や診察内容を理解するために,医師からカルテ診療録)を見せてもらうこと。1998年1月に健康保険組合連合会が行った調査によると,患者の約7割がカルテを〈見たい〉〈多少見たい〉と答えており,カルテ開示への要求は高まっている。 しかし,全国でもカルテ開示をする病院は増えているものの,今のところは院長裁量で実行しやすい個人病院が中心で,大病院ではあまり進んでいない。カルテは医師の覚え書きという性質もあり,英語や走り書きなどが多く,患者に対する感情的なコメントを書くこともあるため,カルテ開示に二の足を踏む医師も少なくない。特に,患者の遺族への開示は医師の抵抗が強く,病院側は証拠保全(将来の訴訟にそなえて証拠を確保する裁判上の手続き)をされないように,カルテを改ざんするケースも少なくない。 カルテについては医師法医療法規定があり,病名や治療方法などの記載事項や5年間の保存義務について定めている。しかし,カルテが医師と患者のどちらに属するのか,開示すべきか,といった問題については記述がない。そこで,厚生省の〈カルテ等の診療情報の活用に関する検討会〉(座長=森本昭夫・上智大学教授)の1998年報告書は(1)診療情報の提供は医師らの職業上の積極的な責務,(2)患者に求められたら,治療効果に悪影響があるのが明らかな場合を除き,カルテなどの診療記録を開示する――などを法律で規定すべきだと提言した。開示する対象はカルテのほか,看護記録処方箋(せん),検査記録,X線写真も含む。なお,遺族からカルテ開示を求められた場合の規定は,今後の課題として残されている。
→関連項目診療報酬点数電子カルテ

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知恵蔵 「カルテ開示」の解説

カルテ開示

カルテなどの開示を法律で義務付けるかどうかを議論してきた厚生(現・厚生労働)省の医療審議会は1999年7月、賛否両論があることから法制化を見送る意見書をまとめた。患者の要求があれば、カルテ、看護記録、検査記録、X線写真などの医療情報を開示するよう法制化すべきとした98年の同省検討会から後退した。しかし、反対していた日本医師会もカルテ開示は医師と患者の信頼関係を保つ上から好ましいとする指針をまとめ、自治体病院や大学病院などで開示に踏み切るケースも増え、開示は大きな流れになっている。

(田辺功 朝日新聞記者 / 2007年)

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