医師の資格や業務について規定する法律。旧医師法(1906)を廃し,医療法とともに1948年制定された。
6年制の医科大学(医学部)を卒業し,国家試験に合格し,欠格事由に該当しない者に対して,厚生大臣が〈医籍〉に登録することによって医師免許が与えられる。禁治産,準禁治産,視覚・聴覚・言語の完全な障害のある者は免許を受けられない(絶対的欠格事由)。また精神障害や罰金以上の刑に処せられたこと,医事不正行為などがある者には免許が与えられないことがある(相対的欠格事由)。免許取得後に同様な状況になった者は,免許の取消や業務の停止処分を受けることがある。その処分権者は厚生大臣であるが,医道審議会に諮問することが必要とされている。法的には,免許を取得すればすべての医業ができることになっているが,なお2年以上の臨床研修を経ることが望ましいとされており,現実にほとんどの者がこれを受けている。
医療(診断書などの発行を含む)は危険な行為であるから,それを業として行うことは一般的に禁止し,医師免許を持つ者にのみにそれを許し,また医師という称号を用いることを許す(業務独占・名称独占)。そのような危険・必要な業務を独占的に行う地位を確保されている職種だけに,医師には法律によって特有の義務・規制が少なからず課されている。
(1)診察治療の求めに応ずるべき義務,諸証明書を発行する義務,(2)自ら診察しないで,診察したり診断書や検案書を発行したりしてはならない,(3)異状死体(異常死体)を発見したときは警察に届け出る義務,(4)処方箋を交付する義務(医師が自ら調剤することは患者が申し出たり応急処置などの例外的な場合に限られる),(5)患者らに療養の方法等を指導する義務,(6)診療録を記載し,5年以上保存する義務,(7)特別の必要がある場合に厚生大臣が指示することができること,等が医師法に規定されている(このほかの医師の業務としては,伝染病の届け出などは諸衛生法規に,また虚偽診断書の発行や秘密漏泄,また堕胎等の禁止については刑法に定めがある)。
本法は第2次世界大戦直後に制定された法であるため,その後の科学技術と社会の変化に応じた改訂が求められている。歯科医師,看護婦,薬剤師,臨床検査技師,理学療法士など他の保健従事者のためには別個の法規が定められているが,専門業務の増加に伴いその種類は増加しつつある。各専門家間での業務の分担,また遠隔医療の導入,カルテの公開など医師法規定の見直しも必要とされている。また,現在の日本の制度下では,医師免許を持つ者は自分一人の判断でいかなる医療分野(ただし,医療法施行令に定めた診療科名に限る)を標榜することもできるが,この不備を補うため各学会が導入した認定医制度も整いつつあり,これを法制度化する動きも見られる。なお,医師会などの医療専門職団体については,現在の法制度では触れられておらず,自律的集団とされている。
→医者 →医療
執筆者:宇都木 伸
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