改訂新版 世界大百科事典 「ガガンボモドキ」の意味・わかりやすい解説
ガガンボモドキ (擬大蚊)
Bittacus nipponicus
シリアゲムシ目ガガンボモドキ科の昆虫。細長い体と脚,長い翅,飛ぶときのようすなどガガンボに似ているため,こう呼ばれる。頭はくちばし状に長くなり,その先端に小さな咀嚼口(そしやくこう)がつき,シリアゲムシによく似るが,雄の腹は背側に曲げられないし,腹端のはさみは退化している。どの脚も体より長く,先端に大きなつめが1個だけつく。つめをたたみこんで物をつかまえる。淡褐色で,前翅長20mmほどで,関東地方だけに分布する。ガガンボモドキ科Bittacidaeの昆虫はみな森林にすむが,林縁や疏林で多く発見される。後脚で小さな昆虫をとらえて食べる。夏に産み落とされた卵はそのまま越冬し,春に幼虫が現れる。幼虫は林内の湿地上で,昆虫その他の小動物を食べて生活するらしい。30日ほどで老熟し,土窩(どか)をつくって中で蛹化(ようか)する。ツマグロガガンボモドキでは配偶行動の際,雄が雌にアブラムシやハエなどの昆虫をプレゼントする。
執筆者:宮本 正一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報