日本大百科全書(ニッポニカ) 「ガス化」の意味・わかりやすい解説
ガス化
がすか
gasification
固体または液体物質を気体にする操作をさすが、通常は石炭、コークスのような固体、あるいは石油、ナフサのような液体と、水蒸気、空気、酸素のようなガス化剤とを反応させて、燃料ガスや工業用の原料ガスなど気体状製品を得るプロセスのことをいう。
古くは19世紀から、石炭やコークスを原料としたガス化法により燃料ガスを得ていた。石炭ガス、水性ガス、増熱水性ガス、発生炉ガスなどがこれにあたる。1960年代になって、より安価で処理しやすい原油、ナフサなどの液体を原料として用いるガス化法が主流となり、石炭系のガス化法は一時ほとんど姿を消した。また、1970年代後半からは液化天然ガス(LNG)の導入が盛んとなり、都市ガス用の原料としては、石油系原料からのものを上回るようになった。このように、ガス化プロセスは、その時代の原料事情に大きく影響されるが、国情によっても状況はかなり異なる。たとえば、アメリカにおいては天然ガスが豊富であるため、ガス化法による家庭用燃料ガスの製造は行われていない。
ガス化プロセスは、原料(固体、液体)、操作(連続式、サイクリック式)、熱供給(内熱式、外熱式)などに応じて多種類あるが、基本的な反応は類似しており、(1)炭化水素原料の熱分解による熱分解ガスと残存炭素の生成反応、(2)酸素による部分酸化、(3)水蒸気との反応(水蒸気改質ともいう)、(4)気相での水性ガスシフト反応が主要な反応であり、一部のプロセスでは、(5)水素との反応を含むことがある( )。
現在操業しているプロセスの例を若干記す。重質油や石炭を原料として千数百℃の高温で(2)の反応を行うと、一酸化炭素と水素が得られ、合成用ガスとして用いられる。(3)の反応を利用すると、単位原料当りのガス収率が大きいので有利であるが、これは吸熱反応であるので、なんらかの手段で熱を供給しなければならない。石炭のガス化では(2)の反応を併発させることが一般的であり、ナフサのガス化では、反応管を外部から加熱する連続式ナフサ改質法が主流となっている。これからの技術としては、地球環境問題に注目した技術開発が求められている。熱効率を飛躍的に向上させることによって二酸化炭素(炭酸ガス)の抑制を目ざす石炭ガス化複合発電、あるいはカーボンニュートラルなプロセスであるバイオマスのガス化などに期待が寄せられている。
[富田 彰]