日本大百科全書(ニッポニカ) 「石炭ガス化」の意味・わかりやすい解説
石炭ガス化
せきたんがすか
gasification of coal
石炭に水蒸気、酸素、空気、水素などを単独に、あるいは併用して作用させ、水素、一酸化炭素、メタンなどを有効主成分とする気体燃料あるいは合成原料用ガスを得ることをいう。石炭とガス化剤との接触方法によって、移動床型、流動床型、噴流床型などに分類され、1930年ごろに開発されたルルギ法、ウィンクラー法、コッパーズ‐トチェック法はそれぞれの代表例である。その後いくつものガス化炉が開発されてきたが、基本的な形式はこれらの方式を踏襲している。これらのガス化プラントは現在も多くの国で稼動しているが、発電用や鉄鋼用の石炭利用技術に比べると小規模の利用にとどまっている。しかし、石炭の埋蔵量が石油や天然ガスに比べて大きいことから、今後のエネルギー源としての期待は大きく、現在世界各国で、大容量型の新しいガス化法が開発され、石炭ガス化複合発電技術を利用した発電所が数多く運転されている。日本においても、福島県いわき市で石炭使用量1日1万7000トン、発電量25万キロワットという実用規模プラントが運転されている。
[富田 彰]
石炭ガス化の技術
基本的には、石炭を熱分解して、熱分解ガス、タールおよび残存炭素とし、残存炭素を水蒸気を用いて一酸化炭素、水素に転化するものである。水蒸気との反応が吸熱反応であるため、反応熱をなんらかの方法で供給せねばならず、種々のくふうがされている。もっとも一般的には、水蒸気と同時に酸素を吹き込んで一部の石炭を燃焼させる方法が用いられる。ガス化温度を高くすると、水素、一酸化炭素の収率が増え、アンモニア、メタノール(メチルアルコール)を合成する原料ガスに適するようになり、逆に低温かつ高圧下でガス化すれば、メタン含量が増えるので発熱量が高くなり、燃料ガスとしての用途が生じる。前で述べたガス化複合発電は一酸化炭素、水素を主成分とする生成ガスを燃料として用いて発電するものであるが、高温高圧の条件下のガス化法が主流となっている。発熱量が低くても、操作上の利点が大きいためである。
[富田 彰]