日本大百科全書(ニッポニカ) 「石炭地下ガス化」の意味・わかりやすい解説
石炭地下ガス化
せきたんちかがすか
underground gasification of coal
石炭を採炭して地上に取り出すことなく、地下の炭層にあるままでガス化することをいう。周期表で有名なロシアのメンデレーエフが1888年に構想を発表して以来、多くの国で研究開発が進められ、1956年にソ連で実用化された。現在はウズベキスタンで操業しているものが唯一の実用例である。1961年に操業を開始して以来、1日100万立方メートルの低カロリーガスを生産し、近接する発電所に送っている。オーストラリア、アメリカなどでも開発が進められている。
一般的方法は、地上より送風孔とガス排出孔をボーリングして炭層に達せしめ、それらの間をガスが流れるように連結する。そして送風孔より空気を不足ぎみに送りながら点火すると、発熱しながら二酸化炭素を発生し、それはさらに加熱された石炭と反応して一酸化炭素となる。空気のかわりに酸素を用いれば、より発熱量の高いガスが得られる。利点としては、危険な坑内作業を大幅に軽減できること、炭層があまりに薄すぎるとか低品位であるなどの理由で一般の採炭法では経済的でない場合でも経済性が出てくる可能性があることなどである。石炭層とガスの接触をうまく保持でき、一定の組成のガスが効率よく得られれば利点の多い石炭ガス化法となりうる。
[富田 彰]