水蒸気改質(読み)スイジョウキカイシツ(英語表記)steam reforming

デジタル大辞泉 「水蒸気改質」の意味・読み・例文・類語

すいじょうき‐かいしつ【水蒸気改質】

炭化水素水蒸気ニッケルなどの触媒を用いて高温下で反応させ、水素(または水素の混合ガス)を製造すること。原料として石炭メタン液化石油ガスナフサなどが用いられる。水蒸気変成水素改質スチームリフォーミング

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改訂新版 世界大百科事典 「水蒸気改質」の意味・わかりやすい解説

水蒸気改質 (すいじょうきかいしつ)
steam reforming

スチームリフォーミングともいう。炭化水素と水蒸気の反応によって一酸化炭素COと水素H2からなる混合ガス合成ガス)を製造する方法。一般的な化学反応方程式は次のとおりである。

工業的には,天然ガスLPG,ナフサなどの石油系炭化水素を原料とし,700~830℃,15~40気圧の条件下で,触媒上で水蒸気と反応を行わせる。触媒はアルミナを担体としたニッケル触媒であり,助触媒としてカリウムが加えられている。この触媒は硫黄分によって被毒され,活性を失いやすいので,原料中に硫黄分が含まれる場合はあらかじめ脱硫をする必要がある。このためには,アルミナを担体とするコバルトモリブデンなどの酸化物系触媒上で,原料と水素とを反応させる(水素化脱硫)。反応温度は約350℃,圧力は10~30気圧である。この処理により硫黄化合物は硫化水素H2Sと炭化水素に分解され,その硫化水素は酸化亜鉛に吸収させるなどの方法で除去される。

 この水蒸気改質反応は大きな吸熱反応であり,触媒を充てんした反応管は外部から加熱される。この場合,反応管の耐熱性の限界から反応温度は830℃ほどに制約されるため,反応生成物中にメタンCH4がかなり残存する。メタンは合成ガスとしては好ましくないので,さらに一酸化炭素と水素に変換する。このため,空気または酸素を加えてガスの一部を燃焼させることによって約1200℃の高温を発生させ,高温に耐えるニッケル触媒上で再び反応を行わせる。このようにして残存メタンは0.2~0.3%に低下させることができる。以上を要約すれば,水蒸気改質法の工程は図のようになる。
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化学辞典 第2版 「水蒸気改質」の解説

水蒸気改質
スイジョウキカイシツ
steam reforming

水蒸気変成ともいう.[同義異語]スチームリホーミング

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の水蒸気改質の言及

【改質法】より

…たとえば,石油ナフサを水蒸気とともにニッケル触媒上で700~900℃で反応させると,水素と一酸化炭素を主成分とする合成ガスが得られる。これを水蒸気改質(スチームリフォーミング)という。また,石油ナフサを水素の存在下に,白金と酸性アルミナから成る触媒上で,約500℃,15~50気圧の条件下で反応させると,オクタン価の高いガソリンが得られる。…

※「水蒸気改質」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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