与えられた熱エネルギーのうち有効に利用された熱量の割合。一般に熱機関で供給された燃料の発熱量(燃料が燃焼してできた水蒸気が水にならない状態のまま冷却したときに得られる発熱量。低位発熱量という)に対して有効な仕事になった割合をいう。エンジンから取り出せる正味仕事とエンジン内で発生した図示仕事に対応して、正味熱効率、図示熱効率があり、正味熱効率には補機駆動出力を考慮する場合としない場合がある。
燃料は完全に燃焼することはなく、実際に燃焼によって熱機関に供給される熱量は低位発熱量よりわずかに小さい。与えられた熱量の一部分は、燃焼ガスからシリンダー壁へ熱が伝わる冷却で失われ、さらに残りの熱量の一部分は排気で失われ、有効な仕事になるのは半分以下である。熱機関の熱効率は吸気、圧縮、燃焼、膨張、排気のサイクルの最高温度と最低温度の差が大きいほどよくなる。また往復動内燃機関では燃焼前の圧縮の高いほど、燃焼期間が短いほど、燃焼が上死点(ピストンの上昇限界)近くで起こるほど、燃料が空気に対して少ないほど熱効率がよくなる。またガソリンエンジンでは負荷が大きく、絞り弁の開いているほど熱効率がよくなる。内燃機関の正味熱効率は30%程度で、排気損失も30%程度であるから、排気のエネルギーを回生すれば熱効率を向上できる。その方法として排気のエネルギーの一部を排気ターボ過給機により回生して吸気圧力を高める方法と、排気タービンで動力として回生して効率を高める方法(コンパウンド機関という)と、熱交換器で蒸気を発生して蒸気タービンで動力として改正する方法(コンバインドシステム)などがあり、熱効率が60%程度に向上している機関もある。
[吉田正武]
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…密閉サイクルの場合,タービン排気を再び圧縮機に送るには,前置冷却器によって温度を下げることが必要である。 タービンの排気ガスはまだ温度が高く熱エネルギーをもっているので,熱交換器を用いてこの熱の一部を回収し,圧縮機出口の空気の加熱に用いると,その分だけ燃料が節約され熱効率を向上させることができる。このような熱交換器付きのガスタービンは再生サイクルガスタービンと呼ばれ,一方,熱交換しないものを単純サイクルガスタービンという。…
…現実には,加えられたエネルギーをすべて有効な仕事として取り出すことはできないので,実際の機械の効率は1より小さい。熱エネルギーを力学的仕事に変換する熱機関については,それに加えた熱に対する得られた有効仕事の割合を熱効率thermal efficiencyと呼んでいる。熱から仕事への変換過程については,熱力学の第2法則によって制約を受け,高温の熱源(温度T1)から得た熱Q1を完全に仕事に変えることは不可能で,変換過程で必ず熱の一部Q2を低温の熱源(温度T2)に捨てなければならず,熱効率は(Q1-Q2)/Q1=(T1-T2)/T1となる。…
※「熱効率」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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