改訂新版 世界大百科事典 「ガルブレース」の意味・わかりやすい解説
ガルブレース
John Kenneth Galbraith
生没年:1908-2006
アメリカの経済学者。カナダに生まれ,トロント大学,カリフォルニア大学に学んだ。長くハーバード大学で教鞭をとる(1948-74)一方,雑誌《フォーチュン》の編集,民主党政府の物価行政局や経済保障対策局にも関係し,さらにケネディ政権下のインド大使(1961-63),アメリカ経済学会会長(1971)を歴任した。制度学派の流れをくむ学風で現代資本主義を鋭く分析。大企業支配のもとにある現代の“ゆたかな社会”が,(1)慢性的インフレーション,(2)私的生産のゆたかさと公共サービスの貧しさという社会的アンバランス,(3)宣伝広告による欲望の創出のため不断の飢餓感をもつことを指摘した。大企業では所有と経営の分離が進み,実質的支配権が経営者・技術者などの専門家集団(テクノストラクチャー)に移る。利潤極大化よりも企業の安定的成長を行動目標とし,競争よりも計画化を重視する産業国家が生まれるという。テクノストラクチャーによる産業国家では社会的アンバランスが広がるため,公共性を重視した公共国家への移行が必要だと説く。主著《アメリカの資本主義》(1952),《ゆたかな社会》(1958),《新しい産業国家》(1967),《不確実性の時代》(1977)など。
執筆者:地主 重美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報