改訂新版 世界大百科事典 「キツネアザミ」の意味・わかりやすい解説
キツネアザミ
Hemistepta lyrata Bunge
本州以南の日本,朝鮮,中国,東南アジアおよびオーストラリアに分布し,道端や田畑の縁に普通にみかけるキク科の一~二年草。和名のキツネは一見アザミのように見えて実際には違うことを狐にだまされたと称したものである。若葉は食用にされ,中国では全草をきず薬,骨折などの民間薬とする。茎は直立し,高さ30~80cm,上部が分枝して花序となる。根葉は束生し,茎葉は互生する。葉は軟らかく,羽状に深裂する。葉の裏面には白い綿毛が密に生えている。5~6月,多数の紅紫色の花を上向きに開く。花は多数の同形の小花からなる頭花で,径2cm内外。総苞片の背面の上部には竜骨状の突起がある。瘦果(そうか)は無毛で,はっきりした15の肋がある。
おしべの花糸に毛がなく,花柱分枝が離れるなどの点でアザミ属Cirsiumよりはトウヒレン属Saussureaに近いが,総苞片や瘦果の形が異なるので独立のキツネアザミ属Hemisteptaとされている。
執筆者:小山 博滋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報